目次
後遺障害の認定申請をするタイミング
「症状固定」が必要
交通事故でケガをして、長期間治療をしても症状が改善しないという場合には、後遺障害認定申請を行うことを検討すべきです。後遺障害に認定されれば、それまでの通院慰謝料などに加えて、後遺障害慰謝料や逸失利益という項目の賠償金が支払われることになります。この加算される金額は非常に大きく、適切な後遺障害の認定は、適切な賠償の実現のためには大きな意味を持ちます。
ただし、後遺障害の認定申請をするためには、「これ以上は治療を行っても治療効果が上がらない」ということで、症状固定という判断を受けなければなりません。
症状固定の意味
「症状固定」という言葉は、厳密な説明が難しいものです。交通事故の後遺障害の判断でも利用される、労災保険の後遺障害認定に関する書籍(平成28年版「労災補償障害認定必携」69ページ)では、以下のように説明されています。
- 傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(「療養」)をもってしても、その効果が期待しえない状態(療養の終了)、かつ
- 残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したとき
重要な点は、症状固定は、補償を行うための「法的概念」である、ということです。
医学的には、本来、傷病については、「治癒した」か「治療中」という判断しかありません。このため、「治癒のために治療が必要である」とする医師の見解と、治療費を打ち切りたい保険会社との間で、見解の相違があるような状況になります。
とはいえ、症状固定とされると、「治療に効果がない」ということで、その先の治療費について、相手方保険会社は負担しません。一括対応が終了する、という扱いになります。このため、治療を希望する場合には、自分で治療費を負担して、通院する必要があります。この場合には、健康保険を利用するなどして、自己負担を抑えるべきでしょう。
事故から6か月が一つの目安
交通事故から6か月経過しても症状が残っているという場合には、後遺障害の申請を検討すべきです。別の表現をすると、治療期間が6か月に満たない場合には、後遺障害の申請を出したとしても、認定を受けることは非常に困難です。
後遺障害申請のための手続
必要書類の一覧
後遺障害の認定申請をする場合に必要な主な書面は、以下のとおりです。なお、実際にはもう少し資料が必要なこともありますが、最低限のものを記載します。
- 後遺障害認定申請書兼支払指図書
- 印鑑証明書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況説明書
- 診断書及び診療報酬明細書
- 画像記録(レントゲン、MRIなど)
- 後遺障害診断書
- 事故前年の所得を証明する資料(源泉徴収票など)
申請書類の収集方法
加害者の任意保険会社に依頼せず、自分で後遺障害の認定申請をする場合(被害者請求)には、上記資料を被害者側で収集する必要があります。
この方法については、別途説明します。
申請書類の送付先
加害者加入の「自賠責保険」に対して送付します。普段の窓口となることが多い加害者側の任意保険ではありませんので、注意が必要です。
なお、加害者加入の自賠責保険会社は、交通事故証明書に記載されていることが通常です。
後遺障害認定申請後の流れ、所要時間
手続の流れ
後遺障害認定申請が行われると、自賠責保険会社から「損害保険料率算出機構」という組織に調査依頼がかけられます。実際には、その機構の「調査事務所」が資料などを検討して、後遺障害への該当性を判断します。
山梨県内で申請をすると、「さいたま調査事務所」に調査依頼がかけられることが通常です。
なお、JA共済のみ、調査する組織が異なります。ただし、今後、損害保険料率算出機構の調査事務所による調査に一本化される予定です。
書面不備・不足の場合
提出した書面に不備や不足がある場合には、調査事務所から照会がなされます。被害者の提出書類に不備がある場合には、その補充の依頼がなされます。
他方、調査事務所で医学的な資料が必要と判断した場合には、病院に照会を行うこともあります。
結論が出るまでの時間の目安
特に問題なく調査が進めば、申請から3か月程度では調査事務所の結論が出てきます。この結論をもとに、加害者の自賠責保険から被害者に対して、結果が通知がなされることになります。
後遺障害の等級が認められた場合には重いものから順に1級~14級のいずれかに該当することになります。受傷部位により、細かい号数も指定されます(神経症状の場合は「14級9号」である、など)。後遺障害に該当しなかった場合には、「非該当」という判断になります。
結果判明後の流れ
後遺障害に該当した場合
被害者請求の場合で、後遺障害に該当していると判断されれば、等級認定の結果通知と同時期に、自賠責保険から保険金の支払いがなされます。多くの場合で、後遺障害等級ごとの限度額が支払われることが予想されます。
被害者請求の大きなメリットは、等級結果の判明と同時に、まずは自賠責保険から一定程度の補償が受けられる点にあります。
結果判明後の手続
後遺障害に該当しなかった場合や、該当してもその等級に不満がある場合には、異議申し立てを行うことが可能です。異議申し立ては、時効期間内であれば何回でも行うことができます。
他方、認定された等級などに異議がない場合には、後遺障害に該当していることを前提に、自賠責保険金だけでは収まらない賠償の残額について、加害者の任意保険会社と交渉することになります。
まとめ
- 事故から6か月以上経過して症状が残る場合には、後遺障害認定申請を検討すべき
- 後遺障害認定申請は、必要資料を加害者の自賠責保険あてに送付する方法で行う
- 申請から結果判明まで、3か月程度が予想される
- 等級に不満があれば、異議申し立てが可能である
関連する内容については、別途記載します。
補足
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