交通事故の治療終了時期は、6か月が1つの目安となる

治療終了までの流れ

 被害者に過失が少ない交通事故であれば、加害者の保険会社が治療費の支払いをしてくれることが通常です(「一括払」、「一括対応」などと呼ばれます)。

 とはいえ、このような一括対応は、永遠に続くものではありません。この終了時期をどのように考えればよいでしょうか。以下で説明します。

一括払とは何か、なぜ交通事故加害者の保険会社が治療費を支払うのか

治療終了までの流れ

 一括対応を行う保険会社は、最初に「同意書」の作成を依頼します。この同意書により、加害者の保険会社は、医療機関から情報提供を受けることが可能になります。このようにして、加害者の保険会社は、治療費の支払いを行う一方で、被害者の具体的な症状について知ることができるようになっています。

 加害者の保険会社は、担当医から治療状況を聞くなどして、治療終了の時期を見計らっています。そして、一般的なむちうち症の事案の場合、事故から長くとも6か月といった時期までには、電話や郵便などで、被害者に治療終了の打診をしてくることが通常です。

 このように、保険会社としても、何の根拠もなく治療終了を求めるわけではありません。よって、保険会社から治療終了の話を受けた場合は、治療についての一つの見解として、検討する必要があると考えるべきです

保険会社による治療打ち切り

 保険会社の治療終了の話を受け入れずに一定期間が経過すると、一方的に治療打ち切りとされることがあります。一括対応が保険会社のサービスである以上、これは避けがたいことです。あまり望ましい事態ではありませんが、治療打ち切りが保険会社の裁量で可能であるとされている以上、打ち切りの是非自体を争っても、実益がないことも多いものです。

求められる対応

治療期間は6か月を目安にする

 事案により異なりますが、むちうち症が主たる症状の場合で、交通事故から6か月を経過して治療終了の打診を受けた際には、これの受け入れを検討すべきです

 交通事故から6か月を経過してもむちうちの症状が残っている場合には、「後遺障害」が認定される可能性が出てきます。他方で、むちうちの症状については、一般的には時間経過によりある程度自然に回復すると理解されています。このため、治療を長引かせることで、「あるの時点では後遺障害に該当しえたものが、治療終了時には治療の効果で該当しなくなっていた」ということが起こりえます

 治療効果が出ることは、望ましいことです。とはいえ、損害賠償の総額という点では、後遺障害に該当しないことは、マイナスとなります。よって、賠償額を最大化することを目的とする場合には、長期間の治療(治療費は加害者の保険会社支払い)を求めるよりは、早期に後遺障害の認定申請をした方がよいということは、実際に多くあります

交通事故から6か月前に治療終了となった場合

 治療終了の打診や治療打ち切りなどで、交通事故から6か月に至る前に一括対応が終了となってしまった場合には、どうすればよいでしょうか。症状が完治していれば、それまでの治療状況による示談交渉に移ることになります。他方、症状が残っている場合には、健康保険などを利用して通院することも検討するべきです

 一括対応が終了しても、自分の費用支払いで通院することは自由です。とはいえ、保険会社がこの費用を支払う可能性は低いため、健康保険などで負担額を軽減しておくべきでしょう。そして、通院期間が6か月となっても症状が残っている場合には、後遺障害の認定申請を検討するべきです。

保険会社が治療を打ち切る根拠(発展編)

 実際には、交通事故から6か月経過したとしても、症状が残ることはあります。それにも関わらず、なぜ治療が終了となるのでしょう。これを理解するためには、「症状固定」という概念を理解する必要があります。

 症状固定とは、要するに、「治療を継続しても、もう症状が大きくは変わらない状態」ということです。残っている症状は、治療によって早期に改善することは考えにくく、その症状は後遺障害の評価の問題であるため、加害者の保険会社としては、症状固定以降の治療費を支払うことはできない、という判断になります。

 症状固定時をいつにするべきかというのは、医師の専門的判断も絡み、難しい問題を含みます。この内容については、改めて説明することとします。まずは、「加害者の保険会社としては、症状固定とされた後の治療費支払いを行うことは原則としてない、後は後遺障害の問題と把握している」というように捉えておいてください。

被害者請求で後遺障害認定の申請をする場合の流れ

まとめ

  1. むちうち症の場合、6か月の治療期間を1つの目安とすること
  2. 6か月の通院後も症状がある場合は、後遺障害の認定申請を検討すべき
  3. 6か月の治療前に治療打ち切りになった場合には、健康保険などの利用による通院も検討すべき

補足

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