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離婚を求める裁判の提起
離婚に関する調停前置主義
離婚調停が不成立になった場合で、それでも離婚したいということがあると思われます。このときは、離婚を求める訴訟を提起することになります。このように、離婚訴訟を提起する前には調停が必要な枠組みのことを、「調停前置主義」といいます。
離婚を求めた調停が不成立になると、家庭裁判所にて、その旨が記載された証明書を作成してくれます。この書面を、訴状とともに裁判所に提出することになります。
訴訟が係属するまでの流れ
管轄の家庭裁判所に対して、訴状などの必要な書面を提出すると、1か月後くらいに裁判の日が指定されます。その後、裁判所から、被告となる配偶者に対して、裁判所の封筒で各種書面が送付されます。
この封筒には、訴状や証拠などの書面のほかに、裁判の日が記載された書面や、反論がある場合などに作成する答弁書の書式が入っています。
裁判の進行
離婚訴訟の第1回期日
第1回期日は、原告の訴状が陳述されます。被告が答弁書を提出していた場合には、答弁書も陳述されます。
裁判官は、和解の可能性があれば、それを探ることもあります。とはいえ、調停で離婚の話し合いがついていない以上、訴訟の初期段階で和解することは難しいことも多いように思われます。その場合には、答弁書を提出するほか、それ以外にも被告から反論があれば、第2回期日までにその書面提出を行うように取り決めることが多いところです。裁判所からは、「反論を記載した準備書面を提出してください」などと誘導されることになります。
なお、次回期日は、裁判所に出頭した人が裁判所と話し合いのうえで決めることになります。裁判に出頭しないと、自分の希望する日に確実に決めることは難しくなります。
離婚訴訟の第2回期日以降の展開
第2回期日以降は、それぞれが主張立証を行うことになります。離婚訴訟も「訴訟」ですので、離婚を求める側は、離婚が成立するために必要な事実関係の主張立証が求められます。
なお、民法で規定されている離婚原因は、以下のとおりです。離婚原因の内容についての詳細は、また別途説明します。
民法第770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
実際の離婚訴訟の進行
裁判実務では、特に離婚訴訟では、和解の可能性を探求しながら手続が進むことが多いものです。離婚訴訟でどうしても折り合えないと、尋問手続に進むことになります。そして、尋問手続は、夫婦がお互いに悪口を言うような展開になりがちです。そうなると、夫婦に子どもがいる場合の面会交流の実施など、離婚訴訟の後にも悪い影響を与えることになりかねません。
このため、和解で合意のうえで離婚できる(又は夫婦としてやり直せる)ような場合には、裁判所も尋問までは手続を進めないこともあります。しかし、どうしても合意点が見つからない場合には、通常は尋問手続の後に、裁判手続は終結となります。
裁判での審理終結後も和解できますが、そのようなことがなければ、判決となります。判決は、尋問後などに審理が終結された時点で指定される判決期日に言い渡されることになります。
だいたいの所要時間
弁護士関与の場合などでスムーズに進めば、5回目の期日ころまでには尋問実施まで可能なことも多いでしょう。4回目期日を終えるまでが、訴訟提起から約5か月といった期間が想定されます。尋問の日程調整で少し時間を要しても、訴訟提起から7か月後くらいには、尋問となるかと思われます。
和解の可能性を探るなどのやり取りを考えても、訴訟提起から8か月後くらいには判決となるように思われます。
判決
家庭裁判所での判決
判決では、離婚原因の立証がなされているかどうかが判断されます。これが立証されていれば、離婚が認められます。他方、離婚原因が証明されていないとなれば、離婚は認められません。
上記のとおり、離婚訴訟も「訴訟」です。このため、夫婦の一方に同情すべき事情があるなど、情緒的には離婚を認めるべき内容であったとしても、立証が不足していれば、判決で離婚することはできません。
不服があれば控訴審へ
判決に不服があれば、高等裁判所に控訴することになります。控訴審については、以下の記事で説明しています。
補足
以下のページも、よろしければご覧ください。