適正な面会交流の実現のために

はじめに

面会交流とは

 離婚する夫婦に子どもがいる場合、子どもの親権者を確定する必要があります。親権者となった親は、子どもの実際の世話など、日々の監護にあたることになります。この親のことを、「監護親」といいます。

 他方、非親権者などの非監護親は、多くの事案では日々の監護は行わない一方で、養育費を支払うこととなります。ただし、子どもとの接触が一切許されないわけではありません。具体的な取り決めにより、月に1回程度のペースで、親子が接触することがあります。

 この子どもとの定期的な交流のことを、「面会交流」といいます。

適正な養育費の算定のために

面会交流の実情

 多くの事案では、母親が子どもの親権者となります。そして、父親は養育費を支払い、希望する場合には定期的に面会交流を行うことになります。

 ただし、面会交流は、「希望する親」と「希望しない親」が、かなりはっきりと分かれます。離婚した父親が再婚したようなケースでは、元妻の子どもとの交流が一切途絶えるということも、珍しくありません。

 他方で、面会交流を望む父親に対して、婚姻中の暴力などを理由に、母親がこれを拒むことがあります。子どもが小さい場合には、母親がブロックすれば、面会交流は事実上不可能となります。そうなると、面会できない父親は、八方ふさがりの状況となることもあります。

面会交流を求める調停について

協議離婚でも面会交流の取り決めは可能

 面会交流の決め方に定まった方法はありません。このため、協議離婚で離婚届を作成する際に、面会交流について覚書を交わしても問題ありません。

 ただし、協議離婚の場で詳細な面会交流の方式まで取り決めるという事案は、少ないように思われます。このため、以下では、家庭裁判所で行われる、面会交流を求める調停について説明します。

言い分に隔たりがある場合は調停手続で決める

 離婚時に親権者争いがあった場合に典型ですが、面会交流の取り決めでモメることがあります。そのような場合は、離婚時に面会交流の条項で合意できないことがあります。

 また、離婚時には取り決めを行ったとしても、取り決めた内容どおりに子どもに会えないなど、条項違反が問題となるケースもあります。このような場合には、当事者同士の話し合いには限界があることが多いものです。結局、家庭裁判所の調停手続を利用して協議するべき、ということになります。

面会交流を求める調停の進行

 面会交流を求める親が、管轄の裁判所(原則として相手方居住地を管轄する裁判所)に調停の申請を行って正式に受理されると、月1回程度のペースで調停が進行することになります。

 面会交流は、子どもが非親権者と交流できる機会です。このように、面会交流は、子どもが両親からのケアを受けて健全に生育することを実現するための、子どもの権利でもあるという理解が通常です。よって、裁判所は、面会交流について、「明らかに子どもの福祉に反しない限り、認められるべきである」という姿勢を取っているものと解されます。

 しかし、離婚前に感情的な行き違いなどがあればそれだけ、親権者は面会交流を嫌がるものです。このようにして、調停では、「面会交流を求める親」と「面会交流を拒む親」の対立が生じることが多いものです。

家庭裁判所調査官の関与

 調停の席で面会交流の実施について隔たりが埋まらない場合は、いかに裁判所が「面会交流は子どもの権利でもあるから行うべき」と考えていたとしても、手続は進みません。月に1回話し合いに関与するだけの調停委員会が何を言っても、面会交流に拒否的な親権者の対応を解きほぐすことは難しいでしょう。

 このような場合に、家庭裁判所調査官という方が、手続に関与することがあります。家庭裁判所調査官は、児童心理学などの専門の知見を持つ裁判所職員です。面会交流の調停に関連しては、子どもに直接聞き取りを行うなどして、面会交流の実施に関連する資料収集を行います。

 家庭裁判所調査官は、当時者の家庭訪問など、裁判所の外に出ることもあります。そして、収集された情報をもとに、面会交流の実施が望ましいかどうかの報告書を作成します。

 実際に面会交流が認められるかどうかは、この家庭裁判所調査官の調査報告書が重視される傾向にあるといえます

調停成立、または審判への移行

 家庭裁判所調査官の報告書などを基に、面会交流について検討を行うことになります。家庭裁判所調査官が「面会交流が相当である」と評価していれば、通常は面会交流を認める方向で裁判所は調停を進めようとすることでしょう。仮に親権者が面会交流を強く拒絶している場合でも、説得に応じるようになれば、具体的な面会方法を協議して、調停成立へと向かうことになります

 他方で、調停が不成立となれば、審判手続に移行します。審判では、裁判官の判断で、面会交流を認めるか否かの判断が出されます。ここで、家庭裁判所調査官の報告書が「面会交流が相当である」ということであれば、審判となっても面会交流を認めることが多いでしょう。しかし、調停での合意ではないとなると、実際に面会交流の実施する際に拒絶されてしまうケースもあります(「子どもの体調が悪い」などという主張は、よく使われる方便です)。

 このため、可能な限り調停で合意することが望ましいといえます。

面会交流の確実な実施のために

調停では冷静な対応が重要

 特に面会交流を求める親の場合、調停では冷静に対応することが重要です。いかに面会交流が子どもの権利であり、原則としては認められるべきものであるとしても、拒否的な相手方の姿勢を解きほぐすとなれば、感情的な対応は慎むべきです。調停の状況によっては、離婚の際の夫婦喧嘩が再燃するようなこともあります。しかし、子どもの福祉という観点からすれば、面会交流について協議する場でそのような喧嘩を続けることは、意味がありません。

 特に、養育費支払を面会交流の条件に利用することは、厳禁です。そのような主張は法的に通らないものです。

 他方、親権者としては、「子どもに会わせなければ金は払わない」と脅されていると感じることでしょう。話し合いの進行に有害な主張というほかありません。

相手方が面会交流の実施に応じない場合

 面会交流調停が成立した場合でも、親権者がいろいろな理由をつけるなどして、面会交流を拒むことがあります。

 そのような場合には、「裁判所による履行勧告」や「間接強制」という手続きがあり得ます。これらについては、以下の記事で説明しています。

適正な面会交流の実現のために・履行勧告及び間接強制

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

離婚

面会交流について