夫婦が離婚をしたいと考えた場合には、日本の場合、3つの方法があります。統計的には、話し合いによる「協議離婚」が最も多数派です。他方で、話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所で離婚について決めることになります(「調停離婚」または「裁判離婚」)。
ただし、いきなり離婚するために裁判をすることはできません。調停前置主義という制度のため、まずは調停で第三者を入れて、裁判所にて離婚について話し合うことが必要です(家事事件手続法257条)。調停で夫婦が話し合っても離婚が成立しなかった場合で、それでも離婚を希望するという場合に、夫婦の離婚を希望する側が、家庭裁判所に離婚訴訟を起こすことになります。
なお、離婚訴訟を離婚裁判ということもありますが、意味は同じです。

以上のとおり、離婚訴訟は、協議や調停が整わず、離婚が成立しなかった場合に取られる法的手段となります。なお、この「離婚が成立しなった」というのは、「夫婦で離婚自体には合意しているが、離婚のための条件で合意できなかった」という場合も含みます。典型的には、財産分与の扱いや子どもの養育費の金額で争いがあった場合や、慰謝料の面で折り合わなかった場合です。
目次
離婚訴訟(離婚裁判)の流れ
離婚訴訟をめぐる大まかな流れは、以下のようになります。協議や調停でなく、離婚訴訟となれば、これは通常の民事裁判の扱いと、原則として同じです。このため、最終的には、離婚を認めるかどうかの裁判所の判断(判決)が出ることになります。財産分与などの条件についても、これが争点となっていた場合には、同様に裁判所により判断されます。そして、その判決に不服がある側が控訴すれば、高等裁判所で控訴審が行われることになります。
ただし、これもほかの民事事件と同様ですが、訴訟となった場合でも、いつでも和解が可能です。よって、裁判所から和解案が示されることも、しばしばあります。場合によっては、調停に事件が回付されることもあります。離婚訴訟は、事案の性質上、他の民事事件と比較しても、和解を目指す傾向が強いといえます。

※割合の出典は「令和4年度『離婚に関する統計』の概況(厚生労働省)」
離婚を求める裁判の提起
離婚に関する調停前置主義
上記のとおり、離婚訴訟を提起するためには、離婚調停を経る必要があります(調停前置主義)。
離婚を求めた調停が不成立になると、家庭裁判所から、その旨が記載された証明書の交付を受けることができます。離婚訴訟を提起する際には、調停前置がなされ散ることを示すため、この証明書を、訴状とともに裁判所に提出しなければなりません。
訴訟が係属するまでの流れ
管轄の家庭裁判所に対して、訴状などの必要な書面を提出すると、裁判所による訴状の審査が行われます。この審査にて書面の不備がないとなれば、だいたい1か月後ころに裁判の日(裁判期日)が指定されます。その後、裁判所から、被告となる配偶者に対して、裁判所の封筒で各種書面が送付されます。
この封筒には、訴状や証拠などの書面のほかに、裁判の日が記載された書面や、反論がある場合などに作成する答弁書の書式が入っています。
裁判の進行
離婚訴訟の第1回期日
第1回の期日では、原告の訴状が陳述されることになります。被告が答弁書を提出していた場合には、答弁書も陳述されます。
裁判官は、和解の可能性があれば、それを探ることもあります。とはいえ、調停で離婚の話し合いがついていない以上、訴訟の初期段階で和解することは難しいことも多いように思われます。その場合には、答弁書を提出するほか、それ以外にも被告から反論があれば、第2回期日までにその書面提出を行うように取り決めることが多いところです。裁判所からは、「反論を記載した準備書面を提出してください」などと誘導されることになります。
なお、次回期日は、裁判所に出頭した人が裁判所と話し合いのうえで決めることになります。裁判に出頭しないと、自分の希望する日に確実に決めることは難しくなります。
離婚訴訟の第2回期日以降の展開
第2回期日以降は、それぞれが主張立証を行うことになります。離婚訴訟も「訴訟」ですので、離婚を求める側は、離婚が成立するために必要な事実関係の主張立証が求められます。
なお、民法で規定されている離婚原因は、以下のとおりです。離婚原因の内容についての詳細は、また別途説明します。
民法第770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
実際の離婚訴訟の進行
裁判実務では、和解の可能性を探求しながら手続が進むことが多いものです。
とはいえ、離婚訴訟でどうしても折り合えないとなれば、尋問手続に進むことになります。そして、尋問手続は、夫婦がお互いに悪口を言うような展開になりがちです。そうなると、夫婦に子どもがいる場合の面会交流の実施など、離婚訴訟の後にも悪い影響を与えることになりかねません。
このため、和解で合意のうえで離婚できる(または夫婦としてやり直せる)ような場合には、裁判所も尋問までは手続を進めないこともあります。このような考慮もあり、特に離婚訴訟では和解を目指す傾向が強いといえます。しかし、どうしても合意点が見つからない場合には、通常は尋問手続の後に、裁判手続は終結となります。
裁判での審理終結後も和解できますが、そのようなことがなければ、判決となります。判決は、尋問後などに審理が終結された時点で指定される判決期日に言い渡されることになります。
だいたいの所要時間
弁護士関与の場合などでスムーズに進めば、5回目の期日ころまでには尋問実施まで可能なことも多いでしょう。4回目期日を終えるまでが、訴訟提起から約5~7か月といった期間が想定されます。尋問の日程調整で少し時間を要しても、訴訟提起から8~10か月後くらいには、尋問となるかと思われます。
和解の可能性を探るなどのやり取りを考えても、訴訟提起から10~12か月後くらいには判決となるように思われます。
判決
家庭裁判所での判決
判決では、離婚原因の立証がなされているかどうかが判断されます。これが立証されていれば、離婚が認められます。他方、離婚原因が証明されていないとなれば、離婚は認められません。
上記のとおり、離婚訴訟も「訴訟」です。このため、夫婦の一方に同情すべき事情があるなど、情緒的には離婚を認めるべき内容であったとしても、立証が不足していれば、判決で離婚することはできません。
なお、離婚を認める判決の場合で、財産分与の請求などの離婚に付随する請求をしている事案については、この付随請求に対する判断もなされます。
不服があれば控訴審へ
判決に不服があれば、高等裁判所に控訴することになります。
オンライン面談やズームで離婚訴訟を弁護士に相談できる?
オンラインでの法律相談に対応している弁護士事務所は、現在は多くあります。メールやLINEによる問い合わせのほか、zoomなどのウェブ会議の方法を利用した法律相談を受けられることもあります。詳細は法律事務所ごとに違いますので、事前に確認することをおすすめします。
ただし、離婚事件については、事案の性質上、受任前に一度は面談をお願いする法律事務所も多いようには思われます。
離婚訴訟でよくある疑問(FAQ)
「離婚裁判」と「離婚訴訟」は同じ意味?「調停離婚」は「裁判離婚」のひとつ?
「離婚裁判」と「離婚訴訟」の意味合いは同じです。ただし、離婚裁判というと、「離婚訴訟で出た判決」という聞こえ方もしてしまうため、手続を指す場合には「離婚訴訟」の方が分かりやすいと考えます。
「調停離婚」は、「裁判離婚」ではありません。調停離婚も「裁判所での離婚」ではありますが、裁判離婚とは「訴訟を起こして離婚する」ことなので、「訴訟ではなく、調停で合意して離婚する」調停離婚は、裁判離婚と異なります。
離婚裁判・離婚訴訟の弁護士費用は?
事案によりますが、着手金の目安が440,000円〜550,000円(消費税込)です。報酬金は、着手金と同額か、訴訟により得られた利益の16%の金額のうち、高額なものを目安とします(利益が300万円以上の場合は10%など、算定方法は変動します)。
離婚裁判の平均的な期間は?
判決まで考えると、訴訟提起から尋問を実施し、その後に判決となるので、約10~12か月といった期間が想定されます。ただし、一般論として離婚訴訟は長期化しやすい類型といえるため、注意が必要です。なお、反対に、離婚の条件に双方合意のうえ和解成立となるなどして、早期に解決する事案もあります。
離婚裁判の流れが知りたい
こちらをご覧ください。
離婚裁判の財産分与について教えてほしい
婚姻中に築いた財産を、半分ずつ分けるのが原則です。このルールは、共働きであっても専業主婦(夫)であっても適用されます。ただし、離婚裁判で財産分与が焦点になるケースは、多くあります。夫婦で離婚には合意できいても、財産分与の扱いで争いがあるために一方が離婚に応じないという事案もありますので、注意が必要です。詳しくは以下で解説しています。
離婚裁判は傍聴される?
離婚裁判も公開の法廷で行われるので、誰でも傍聴できるというのが原則です。口頭弁論、尋問、判決など、公開の法廷で行われる手続は傍聴可能です。裁判所の入口に掲示されている「開廷表」で、どの日時にどの事件が審理されるか確認でき、申込み不要で原則として誰でも自由に入廷できます。
ただし、弁護士が代理人となる場合には、「弁論準備手続」に付されることが多いところです。弁論準備手続は非公開の別室で行われるため、実際の傍聴機会は少ない傾向にあります。
以下のページも、よろしければご覧ください。
