離婚を考えた場合、準備しておいた方がいいことは?
いくつか確保すべきことがあります。このことについて弁護士がご説明します
さまざまな理由で、夫婦が離婚せざるを得ない状況になることがあります。
夫婦双方が離婚に合意する場合なら、離婚届を提出することで、すぐに離婚は成立します(協議離婚)。
他方で、「あなたが離婚したいけど相手が離婚したくない」といった場合や、「離婚の条件で折り合うことが難しい」という場合には、調停や訴訟といった裁判所の手続を利用しなければならないこともあります(調停離婚及び裁判離婚)。
今回は、裁判所の手続を利用する場合も見据えて、『離婚するために確保しておきたいこと6つ』をご紹介します。
1 住む場所の確保
離婚のためには、別居することが重要です。
弁護士が離婚の相談を受ける際にも、多くの場合で、「まずは別居してください」といいます。これは、スムーズに離婚協議が進むような場合を除き、夫婦が同居したまま離婚を目指すことには、困難が多いためです。離婚の話がもつれているときに、同居した状態で落ち着いて話し合いを続けるということは、難しいものです。お互いが落ち着くことができる状態を確保するため、別居が必要になります。
特に、調停や訴訟といった裁判所の手続を利用するような場合には、別居は必須です。調停や訴訟の手続で、裁判所では落ち着いた話し合いや手続きの進行ができるように配慮してくれます。しかし、家で夫婦が直面してしまえば、感情的なしこりからトラブルになることが考えられます(「裁判所の手続の延長戦が始まってしまう」と表現してもよいでしょう)。このような事態は、望ましくありません。
一般的には、離婚を希望する側が家を出ることが多いでしょう。このときに、実家に帰ることができない場合などには、賃貸物件の調査も必要になります。子どもを連れて別居する場合には、通学の便宜も考えなければなりません。場合によっては、転校しなければならないこともあるでしょう。
このように、今後の生活を見据えて、住む場所の確保をして、それにともなう転校などの手続にも対応していくことが重要となります。
2 協力者の確保
離婚は、長期戦になることも多いです。子どもを養育しながら離婚手続にも立ち向かうとなると、その負担は相当なものになります。仕事と育児を両立しつつ、さらに離婚のことも考えなければならないとなると、一人ですべて切り盛りするというのは大変なことです。
このため、協力してくれる人がいることが望ましいといえます。
まず考えられるのは、実家の協力です。他にも、実家が遠方にあるなどの事情で頼れないという場合には、信頼できる友人や知人に事情を話し、協力を得るという方法もあるでしょう。
もちろん、弁護士を立てるという方法もあります。
3 資金(仕事)の確保
離婚をする上では、お金が必要になることが多いです。日々の生活費や、新たに住居を賃貸した場合には、賃料の負担も出てきます。弁護士を入れる場合には、弁護士費用もかかります。
これまで専業主婦(夫)であり、手元にお金がないならば、別居を見据えて就職先を探すことも検討すべきです。
仮に親族から援助を受けられるのであれば、事前に相談しておくべきでしょう。
なお、相手方から婚姻費用や養育費を支払ってもらうことを最初からアテにするとというのは、やや危険です。相手方がお金を出し渋るケースは多くありますし、婚姻費用等を支払わせる裁判所の手続も、そこまで迅速には進まないためです。各家庭でいろいろな事情はあると思われますが、できるだけ経済的な自立を目指すべきです。
4 証拠の確保
離婚の際に、慰謝料を請求するということもあります。とはいえ、お金の話になると、不貞などの慰謝料の原因になる事実について、相手方が全て否定してくるケースもあります。
相手方が間違いなく不貞しているということであれば、できる限りの証拠を集めておくべきです。写真やLINE、メールのやり取りといった客観的な証拠があれば、そのような資料が望ましいところです。証拠資料の電子データやそれを紙媒体にしたものなどを、できれば複数保管しておくべきです。
他にも、相手方に財産分与の支払いを求めることもあります。この場合には、請求の根拠となる資料を集めておくべきです。銀行口座の状況や、有価証券の有無や、解約返戻金のある保険契約の把握などを行っておくべきです。
基本的には、証拠収集は、別居までが一つの区切りとなることが多いでしょう。別居の準備と並行して、証拠収集も行うべきといえます。
5 気持ちの確保
離婚手続は、長期戦になることも多くあります。調停や裁判がもつれれば、全ての手続が終結するまでに数年かかることもあります。離婚をしたいとしても、気持ちがもたなくなれば、安易な合意で妥協してしまうということもあるでしょう。
離婚を目指すとして、「何を一番優先するのか」ということは、常に考えておく必要があります。慰謝料や財産分与といった金銭の取得を優先するのか、養育費を優先するのか、親権の取得を優先するのか、離婚成立という結果自体を優先するのか、事案により異なります。この辺りの内容は、常に確かめながら手続を進めていく必要があります。
この確認を適切に行うためにも、信頼できる親族等の第三者や、専門職である弁護士の助力は重要といえます。
6 見通しの確保
離婚には、いろいろな手続が含まれます。例としては以下のようなものがありますが、裁判所を利用する場合でも、少しずつ内容や進め方が変わってきます。
ア 離婚の請求
イ 親権者や監護権者の指定
ウ 慰謝料の請求
エ 財産分与の請求
オ 婚姻費用や養育費の請求
カ 年金分割の請求
このあたりの各種手続は、立ち回りが複雑になることもあり、弁護士でも選択を間違えやすいところです。
いずれにせよ、手続の進行状況にあわせて、随時正確な法的見解を確保すべきです。手続の見通しがわかれば、「どれくらいの所要時間が見込まれるのか」ということや、「それぞれの手続で、どれが有利でどれが不利なのか」ということも評価しやすくなります。
離婚手続は、もめてくるとゴールの見えない紛争になることもあります。気持ちの確保のためにも、「今がどのような状況で、今後どのような展開がありうるのか」という情報を適切に得る必要があるといえます。このときには、手続に通じた弁護士の助力が有用といえます。