婚姻費用算出のための資料収集

婚姻費用の原則

 夫婦には、互いの生活水準が同等となるべく助け合う義務があります(民法760条)。この助け合いの義務を果たすべく支払われる金額が、婚姻費用です。

民法第760条(婚姻費用の分担)
 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

特殊事情の主張立証方法

 民法760条には、いろいろな考慮要素が記載されています。多くの事案では、夫婦双方の所得からある程度機械的に決めますが、特殊事情を抱えた夫婦もあります。そのような特殊事情がある場合どのように主張立証を行うべきか、説明します。

 なお、以下の内容は、夫婦間などでの話し合いでは決まらず、離婚調停などの家庭裁判所の手続となり、ある程度の証拠収集を求められた場合を念頭において記載されています

 典型的に特殊事情とされるのは、以下のような内容と解されます。

  1. 住宅ローンの金額
  2. 子どもの学費
  3. 親族関係者の特別費用
  4. 把握の難しい所得
  5. 夫婦関係破綻のきっかけ

住宅ローンの金額の主張立証

 住宅ローンの金額は、口座引き落としの情報から把握可能なことが多いといえます。住宅ローンの債権者が発行する償還表があれば、利率や完済までの時期なども把握できるため、よい資料となります。

 住宅ローンは「自身の資産形成のための支払い」とされるため、婚姻費用に盛り込むことに裁判所は消極的です。支払い義務者の場合で、ローンの考慮のない高額な婚姻費用が決まった場合には、生活が破綻してしまうというならば、その状況を具体的に示すことが求められるでしょう。

 具体的な給与額と、日々の家計簿の作成は、確実に行うべきです。節約の状況があれば、ぎりぎりの生活であることを具体的に示すべきです

【参考】

判例紹介・婚姻費用の算定に住宅ローンなどの各種特別な事情について判断したもの(東京家裁H27.8.13審判)

子どもの学費の主張立証

 子どもの学費については、学校からの請求書などで、ある程度具体的にわかるでしょう。その学費支払いが婚姻費用に加算して考慮されるかどうかは、学費の金額と夫婦間の合意状況が参照されると解されます。

 私立の音楽大学など、高額な学費がかかることがあります。この場合、夫婦で合意して音楽大学への進学を決めたという場合には、婚姻費用に特別な支出として加算して考慮してもらうことも、不可能ではありません。他方、夫婦の一方が無理に進学を決めたという場合には、婚姻費用として加算してもらえないこともあるでしょう。

親族関係者の特別費用の主張立証

 持病の治療などで費用がかかる場合には、医師の診断書がまずは必要でしょう。加えて、支出額の見通しがわかる情報が欲しいところです。これまでの医療費の一覧表を作成するなどして、わかりやすい資料を示すことが求められます。

把握の難しい所得の主張立証

 一方の配偶者が隠している所得となると、他方配偶者がこれを明らかにすることは、非常に困難です。通帳の記載や領収書の収集などが求められるところでしょう。副業がインターネットで集客するものであれば、サイトの情報やメールの履歴などから状況がわかるかもしれません。

 確定申告していればわかりやすいこともありますが、資料を見ることが難しいこともある上、真実を記載していない可能性もあります。水商売などの場合だと、正確な把握は困難を極めます。「クレジットカードの支払額が多すぎる」など、周辺的な事情を主張するしかないこともあるでしょう(それだけでは裁判所は認定してくれないことも多いと思われます)。

婚姻関係破綻のきっかけの主張立証

 離婚原因の主張立証と同様になります。不貞しているのであれば、その証拠をメールやLINEなどで集めるべきところです。暴力があるならば、写真や音声などを収集すべきところです。一方的な不貞により婚姻関係が破綻した場合は、不貞した者からの婚姻費用の請求は、認められない場合もあります。

特別な事情の立証は難しい

例外的な扱いを受けることは容易ではない

 特別な事情は、あまり例が無いからこそ、「特別」です。このため、「算定表」で収まらない費用について、調停から審判になった場合に裁判所に認定してもらうことは、容易ではありません。

 調停でも結論が出ないような不安定な状態を長引かせるよりは、事情は事情としてしっかりと説明するにしても、できるだけ調停で合意の可能性を残しておくべきです。必ずしも算定表にとらわれない婚姻費用の決定も、調停の話し合いの席であれば実現可能です。そのような内容に双方納得できるならば、それこそが調停の醍醐味というべきものです。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

適正な婚姻費用の算定のために・基礎知識

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