目次
はじめに
記事情報について
本記事の原形は、日本時間で平成30年3月12日(月)午後3時時点で確認された情報を基に作成されています。
追記(平成30年4月9日分)
コインチェック社で扱われている通貨については、現時点までにすべて売却と出金が可能になっているようです(ただし、購入については、ビットコイン(BTC)以外はできません)。
コインチェック社につき、マネックスグループによる買収がアナウンスされています。今回のトラブルを巡り、会社の存続に関する大きな動きとなっているようです。
追記(平成30年3月13日分)
流出したNEMの補償金の支払いが、開始されたようです。Twitterの流れなどによると、平成30年3月12日(月)午後10時ころより、コインチェックの口座に日本円の反映があるようです。
また、平成30年3月13日時点では、他のアルトコインの一部についても、売却や出金が可能になっているようです(現状は、購入はできないようです)。
コインチェック社の会見(H30.3.8)
不正出金問題に対する対応
コインチェック社から、仮想通貨の一つであるネム(NEM)の不正出金があった問題で、展開がありました。
まず、3月8日(木)に、同社による会見が開かれました。そして、同社がトラブル直後から明示していた、「不正出金されたNEMに関する、現金による補償」につき、会見日の「翌週をメドに」行うとアナウンスされました。営業日で考えると、本記事作成日の平成30年3月12日(月)以降に、具体的な展開がありうるということでしょう。
また、現在まで取引や出金が停止されている、いわゆるアルトコイン(ビットコイン(BTC)以外の仮想通貨、流出のあったNEMも同様)についての「サービス」も、技術的な安全性を確認し次第、同時期から再開するとされています。
これは、要するに、「アルトコインの売買及び送金を再開する」ということを指すと解されます。
一連のトラブルについて、まずは正常化に向けて、具体的かつ重要なロードマップが示された、というところです。
納税時期との関係
仮想通貨による利得と納税の時期
本件については、完全なる推測ですが、「納税時期までには何らかの解決が表明されるのではないか」との予測を立てていました。
まず、仮想通貨をめぐっては、いわゆる「億り人」と呼ばれる、多額の利得を得た人がいるとのことです(含み益なのか所得なのかは分かりませんが、億単位だから億り人とのことです)。
例えば、BTCは、2017年当初からは約10倍もの値上がりがありました。また、アルトコインではそれ以上の値上がりがあった通貨も多数ありました(イーサリアム(ETH)で約100倍、リップル(XRP)で約350倍)。
このような経緯からすると、 「億り人」も、それなりの数がいることが予想されます。
そして、2017年に多額の利益を上げた人は、この時期(2018年3月)に、確定申告を行う必要があります。おそらくは、「億り人」には最高税率が適用されるでしょうから、2017年に1億の利益を確定した人は、大まかに利得の半額である、約5,000万円の支払い義務が生じます(調達価格などはとりあえず無視しています)。
取引所がロックされたことの意味
コインチェックの利用者の多くは、保有している仮想通貨を預けていたものと解されます。投機行動を迅速に取ろうとすれば、そのような措置を取っていることが通常でしょう。
ただし、この預けている仮想通貨(BTCを除く)の取引や出金が、ずっとできないとう状態です。そうなると、「保有している仮想通貨(BTCを除く)を売却して日本円に換価して、納税原資に充てる」という対応が不可能になります。
このまま納税時期を迎えると、「預け資産はあるのに換価及び出金できず、期限までに納税できない」という人が続出するおそれがありました。
訴訟との関係
現在の訴訟の状況
コインチェック社に対しては、取引停止になった被害者が、集団で訴訟を提起しています。この訴訟は始まったばかりであり、争点もまだ明確にはなっていないと解されます。
ただし、仮に納税時期を過ぎてもアルトコインの措置が解消されないとなると、この裁判が更に大規模化するおそれがあります。推測するに、以下のようなシナリオによる訴訟です。
- 預け通貨の売買及び出金ができなかったことにより、期限までに納税ができなかった
- 延納にも限度があり、適切な支払いができなかったため、多額の課徴金の支払い義務を負った
- 課徴金などの制裁金相当額につき、損害としてコインチェック社に賠償請求する
このように訴訟が泥沼化すると、コインチェック社の事業継続も危うくなるでしょう。また、利用者の納税にも支障をきたすこととなります。
そのような展開は、金融庁をはじめとして、行政も避けたかったと解されます。
まとめ
以上のような都合で、今回のトラブルで監督に入っていた金融庁としても、納税時期までにアルトコインの取引再開及び出金再開を実現することを、至上命題にしていたのではないかと予想されます。
本記事の前に作成した記事(トラブルに乗じた詐欺事件のおそれについての注意喚起です)につき、「過去の一時期にだけ妥当した」となることは、望ましいことでもあります。
そのような結末を期待したいところです。