目次
はじめに
平成27年ころ以降の、交通事故に関する裁判例のうち、重要と解されるものを紹介します。
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後遺障害に関する裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
福岡地裁小倉支部H27.12.16判決(平成27(ワ)367号) |
労働能力喪失期間 →14級9号ながら、67歳までの37年間 |
神経症状ながら、偽関節が発生 症状継続を記載した医師の意見書あり |
被害者は自動二輪車 |
広島高裁岡山支部H27.3.12判決(平成26(ネ)242号) |
後遺障害の発生の有無 →事前認定14級9号も、判決では後遺障害の発生を認めず |
損害が軽微(物損12万円) |
被害者の主訴に合致する診断書の作成は医療事務担当者によるもの |
京都地裁H28.8.30判決(平成26(ワ)2685号 ) |
後遺障害の発生の有無 →事前認定非該当、判決でも後遺障害の発生を認めず |
事故4年前にヘルニア手術、 事故後2か月から症状悪化 |
因果関係につき、「症状が受傷後数日以内に発症し、症状固定の時期まで終始一貫して持続していることが必要である」と一般論の説示 |
東京地裁H28.9.2判決(平成27(ワ)27712号) |
後遺障害等級 →事前認定併合14級、判決でも併合14級を認定 |
中心性脊髄損傷の他覚的裏付けなし、 症状と事故の因果関係について消極的な医師の意見書あり |
労働能力喪失率7%、 労働能力喪失期間7年 |
東京地裁立川支部H28.9.29判決(平成26(ワ)1879号) |
後遺障害等級 →労災10級9号(右肩可動域制限)、判決では14級9号 |
労災申請後の可動域の改善を指摘、 症状固定は労災後約9か月後とした |
労働能力喪失期間30年(体内プレートと症状の関係を指摘) |
東京地裁H28.9.12判決(平成26(ワ)19632号) |
後遺障害等級 →事前認定12級13号、判決でも12級を認定 |
足指の可動域制限は事故後時間経過後に出現、 消極の医師の意見書 |
法人代表者の基礎収入につき、総勘定元帳などの記載を読み込んで、法人業務以外の所得を含めた算定を行った |
名古屋地裁H29.2.24判決(平成27(ワ)4630号) |
後遺障害等級 →損害料率算出機構14級9号、判決では12級13号 |
椎間板ヘルニアの画像所見あり、 業務に具体的な支障あり、 身体的・心的要因は素因減額で考慮 |
事故前のヘルニアの状況も不明だし、心的要因の状況も不明なので、素因減額は10%が相当とした |
家事労働に関する裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
神戸地裁H28.6.15判決(平成27(ワ)493号) |
家事労働の制限内容 →割合的認定 |
頻繁にリハビリ実施 リハビリ計画書に家事の実施が記載 |
2年間に5回の入院 |
名古屋地裁H28.9.30判決(平成27(ワ)3612号) |
家事労働の評価 →割合的認定 |
被害者は80歳の高齢男性、 家事労働の範囲は限定的とされた |
積極の意見書を重視せず |
因果関係に関する裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
横浜地裁H28.7.15判決(平成26(ワ)3303号) |
素因減額の有無 →素因減額40% |
H19にも事故あり(請求はH25の事故) H25の事故は軽微との評価 |
進路変更衝突事案(追突ではない、双方走行中)で、被害者の過失を否定した |
名古屋地裁H27.3.25判決(平成23(ワ)3308号) |
事故後4月後に発症の症状の因果関係 →因果関係なし |
他覚的所見なし、事前認定非該当、 H21.10時点で腰痛などあり(請求の事故はH22.8) |
「通常、外傷による症状は、受傷後が最も強く、次第に軽快するか不変であるという経過をたどる」という一般論を説示 |
名古屋地裁H28.9.2判決(平成27(ワ)5122号) |
因果関係ある治療期間 →1年2月の主張に対し、事故から3か月の治療期間を相当とした |
医師の意見書「(症状につき)演技的な印象あり」、 車両損害軽微、 他覚的所見なし |
遠距離の通院を頻繁に行ったことにつき、「通常では理解し難い行動」と説示 |
大阪地裁H29.3.8判決(平成28(ワ)1540号) |
事故と受傷の因果関係 →軽微事故としつつ事故による受傷を認めたものの、既往症から5割の素因減額とした |
車両損傷が軽微、 事故後に約3月の通院あり、 脊柱管狭窄症等の持病あり |
自営業の休業損害を否定 |
整形外科以外の治療等が問題となった裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
千葉地裁H28.8.30判決(平成27(ワ)335号) |
事故と両眼失明などの因果関係 →因果関係なし |
消極の医師の診断書あり、 被害者は糖尿病にり患していた |
自転車と歩行者の衝突事故、ふらふら歩きの歩行者に過失なしとした |
横浜地裁H28.10.31判決(平成27(ワ)5143号) |
整骨院の交通事故と因果関係ある施術費 →施術費の2分の1に限り認めた |
通院頻度が高い、 受傷していない部位の施術あり |
物件損害額は約13万円と、必ずしも高額ではない(事故と受傷の因果関係は認めた)、 同乗者2名はケガをしていない(事故と受傷の因果関係は認めた) |
名古屋地裁H28.11.30判決(平成27(ワ)2101号) |
前歯1本の歯牙欠損と因果関係ある治療法 →インプラント治療を相当と認めた |
以下の3点で、インプラントが最も望ましい
|
インプラント治療費は合計で約110万円 |
福岡地裁H28.12.20判決(平成26(ワ)3695号) |
事故と受傷の因果関係 →否定 |
事故態様についての主張が不明確で一貫しない、 整形外科への通院が1度しかない、 過去の事故歴から、被害者が通院頻度と慰謝料などの関係を知っていた |
整骨院の治療費等を請求したものの、すべて否定された |
大阪地裁堺支部H29.2.13判決(平成27(ワ)645号) |
事故と整骨院の治療費の相当因果関係 →否定 |
整形外科への通院3日、整骨院への通院115日、 医師は整形外科への通院を指示、 通院した整骨院は原告と交友関係ある者が経営 |
原告の車両は、別件の偽装事故に用いられていた、 車両損害及び代車代も否認 |
広島地裁H29.2.28判決(平成27(ワ)936号等) |
事故と相当因果関係ある通院期間 →2週間に限り認定 |
事故翌日から被害者は草野球に打ち込んでいた、 整骨院での施術の有効性を認める医師の意見書を重視せず(前提事実が異なる、等の理由) |
施術した整骨院は、被害者の勤務先だった |
慰謝料金額に関する裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
神戸地裁H29.1.27判決(H28(ワ)1203号) |
死亡した被害者の慰謝料 →3,000万円 遺族固有の慰謝料 →合計300万円 |
居眠り運転により起こされた重大な事故、 被害者に落ち度がない、 刑事裁判で過労状態や居眠りを否定(以上、被害者慰謝料について)、 事故の重大性と被害者慰謝料の増額事由があること(遺族固有の慰謝料について) |
「一家の支柱に準ずる」として、生活費控除率40%とした(兄弟を扶養)、 同居していない親族にも遺族固有の慰謝料を認めた |
東京地裁H28.12.16判決(H27(ワ)22500号) |
外貌醜状の損害算定 →逸失利益を認めず、慰謝料を増額認定(690万円→830万円) |
事故前よりも所得が増額していた |
– |
京都地裁H29.2.15判決(H28(ワ)1303号) |
外貌醜状の損害算定 →逸失利益を認めず、慰謝料を増額認定(690万円→870万円) |
髪型や化粧により傷を目立たなくさせることは充分可能と評価 |
被害者は7歳の女児である、 被害者自転車にも25%の過失を認定 |
金沢地裁H28.9.15判決(H26(ワ)226号) |
外貌醜状の損害算定 →逸失利益を認めず、慰謝料を増額認定(290万円→450万円、ただし、通院慰謝料も含む) |
髪を下ろすことで傷を隠すことが可能と評価 |
治療内容につき、一部事故との相当因果関係を否定、 自賠責からの既払金等で損害てん補と判断(原告の請求棄却) |
過失割合に関する裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
大阪地裁H28.7.15判決(平成26(ワ)7252号、平成26(ワ)11050号) |
進路変更車と後続直進車(被害者)の事故 →被害者に過失なし |
合図から右転把まで0.36~0.72秒、 合図から衝突まで2秒に満たない |
被害者は自動二輪車 |
福岡地裁H28.11.9判決(H27(ワ)2391号) |
車両と工事現場誘導員(被害者)との衝突事故 →被害者に過失なし |
加害者は酒気帯び運転、 被害者はコーンで囲われた工事区画内にいた |
12級13号の後遺障害が残存した事案 |
保険適用の可否に関する裁判例
事件情報 | 争点及び判断 | 考慮要素 | 特記事項 |
最高裁H29.6.30決定 |
他車運転補償特約の適用の可否 →適用を認めず |
一事登録抹消の未登録自動車であり、登録情報から特約適用の可否を認定することができない、 業者でない者が未登録自動車をあえて運転することは通常想定されない 臨時運行許可の内容が事実に反するなど、特約適用を認めるべきでない |
一審段階では請求を一部認容した |
東京高裁H28.12.14判決(H27(ネ)6207号) |
車両保険金約300万円を請求 →居眠り運転の重過失を理由に、請求を認めず |
請求者に事故前の記憶がないなど、不自然な点が多い、 衝突速度などに照らすと、一瞬の不注意で生じるような事故態様ではない |
地裁判決では故意に起こした事故であると判断 |
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