ニュースなどで、「和解が成立」、「和解金を支払うことで合意」といったように、「和解」という言葉を耳にしたことがある方は多いものと思われます。
この「和解」という言葉は、実は法律用語です。民法にも規定のある、法的に効力が認められた取り決めのことを指します。では、「和解」が具体的にどのような意味を持ち、どのような場面で使われるのか、法律用語としての「和解」のメリット・デメリットを弁護士が解説します。
和解の意味を知っておけば、もしもトラブルに直面したときの選択肢が広がるはずです。
目次
和解とは?
和解とは、民法においては、当事者同士が争いをやめることを合意する契約のことです。
(和解)
民法 第695条、第696条
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
(和解の効力)
第六百九十六条 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。
和解の定義については、「互いに譲歩して」と民法に明記されています。
つまり、和解の本質は、当事者同士がお互いに何かしらの妥協をして、争いを終結させる点にあります。裁判所の判決のように、「一方が完全に勝ち、もう一方が完全に負ける」という構図ではなく、お互いが折り合いをつけて解決を図る手段です。
和解の役目、民事事件・刑事事件における和解の違い
民事事件における「和解」の役目
民事事件・紛争の当事者同士が、譲歩し、合意して問題・事件を解決することです。「裁判上の和解」と「裁判外の和解」があります(後述)。
刑事事件における「和解」の役目
刑事事件における和解は、被害者・加害者間の和解契約のことです。報道などでは「示談」と表現されることもしばしばありますが、意味はほぼ同じです。
和解する相手は、傷害、窃盗などの被害者になります。和解にあたっては、加害者から反省や謝罪をして、これを被害者に受け入れてもらい、さらに和解金の金額でも合意するということが通常です。和解により被害届が取り下げられたり、被害感情が和らげば、刑事処分の軽減も見込むことができます。
和解の種類とそれぞれの特長・メリット
和解の種類は、大きく2つ種類あります。
- 裁判外で、当事者同士が話し合って成立させる私法上の和解(裁判外の和解):民事事件で当事者同士で取り決める和解のことです。和解金が支払われない場合などに、強制執行をすることできません。また、刑事事件をめぐり、民事裁判を経ずに交わされる和解契約(示談とも呼ばれます)も、ここに含まれます。
- 裁判手続の中で成立する裁判上の和解:裁判上の和解には確定判決と同一の効力があるため、相手が約束を守らずに支払いなどをしなかった場合は、和解書に基づき、「強制執行(口座差押えや給与差押え)」が可能になる

和解の一般的なメリット
時間と費用の節約
裁判は、一般的には、長期化することが多いものです。それなりにスムーズに進んだ場合でも、提訴から判決まで考えると、6~8か月程度はかかります。その間に、弁護士費用や裁判費用もかさんでしまうということがあり得ます。
一方、和解であれば、早期に問題が解決できます。
精神的負担の軽減
裁判で争い続けることは、どうしても精神的な負担となります。判決を読み切ることも容易ではなく、常にリスクがつきまといます。和解であれば、事前に条件を協議することもできますので、先が予見できないという精神的負担を軽減することができます。
関係を維持できる場合がある
トラブルになれば、相手方との関係が悪くなるのが普通です。特に裁判となれば、争いが長引き、修復不可能な関係になることも、多くあります。親族の場合でも、同様です。
そのような事態となるまで徹底的に争うよりも、お互いの言い分がすべて提出されたあとに、和解で穏便に解決できれば、その後の関係が修復されたり、維持することも実現しやすいといえます。
和解・示談が交わされるシーン
和解は、さまざまな法的トラブルの場面で交わされます。ここでは代表的なケースを紹介します。
交通事故での和解
交通事故は、和解(示談)が最も頻繁に利用される場面の一つです。
事故後、双方(多くの場合は、加害者側の保険会社と被害者の保険会社同士)の間で損害賠償額や補償内容等について話し合いが行われます。ここで合意に至れば、和解が成立します。多くの交通事故事件では、裁判まで至ることなく、このような交渉にて解決しています。
ただし、保険会社から提示される金額に納得できないなど、早期の和解が困難な場合には、弁護士に依頼のうえ、和解交渉や裁判手続を行うということもあり得ます。
離婚問題での和解
和解は、離婚をめぐる紛争でも、しばしば用いられます。
離婚をめぐる紛争では、慰謝料や養育費、財産分与、親権などで争うケースがあり、調停、審判のほか、裁判所の判決まで求めていくとなると、長期化しがちです。すべての問題を解決するまでには、数年単位の時間を要するということも、しばしばあります。このような実務の状況や、離婚後も親子関係は継続するということも踏まえて、裁判の途中で裁判所から和解を促されるケースも、少なくありません。
双方が納得できる形で和解が成立すれば、早期に離婚条件を確定できるメリットがあります。特に子どもがいる場合は、子どもへの負担を避けるために和解を選択するということも、多くあります。
相続トラブルでの和解
遺産相続、遺産分割で争いが生じた際も、和解で解決されることがあります。
遺産の評価額やその分割方法、特別受益や寄与分などといった争点で、相続人間で意見が対立しやすいのが相続問題といえます。話し合いがまとまらない場合は、調停や審判のほか、訴訟に発展することもあります。
とはいえ、相続トラブルは、親族間の争いです。判決で白黒はっきりさせるよりも、お互いが歩み寄ることで、その後の関係性を維持するということも重要です。そのような観点から、和解による解決となることも、多くあります。
職場トラブル・ハラスメントでの和解
職場でのハラスメントや不当解雇などの労働問題でも、和解による解決が目指されることが、多くあります。
従業員が会社を訴えた場合などで、ある程度の主張や反論の応酬をしたのちに、裁判所から和解を勧められることがあります。会社側としても、判決で敗訴した場合に、社会的評価への影響を避けたいと考えることがあります。他方で、従業員側としても、早期に解決し、確実に補償や賠償を得たいと考えることがあります。このような双方の希望が合致する場合には、和解となることが多くあります。
なお、労働審判手続でも、約7~8割程度が和解(調停)で終了するというのが実情です。
労働審判手続
解雇や給料の不払など、個々の労働者と事業主との間の労働関係のトラブルを、その実情に即し、迅速、適正かつ実効的に解決するための手続です。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_21/index.html
和解を成立させるためのポイント
和解を成立させるためには、以下の2点を整理しておくことをおすすめします。
- 相手方の立場や事情を冷静に理解する
- 自分の請求について譲歩できる範囲をあらかじめ決めておく
和解成立となれば、和解金の金額や、支払期限、守られなかった場合のペナルティなどを記載した和解書を作成するべきです。口約束だけでは、後々のトラブルの原因となるおそれがあるためです。
また、裁判上の和解を利用すれば、強制執行力が得られます。よって、相手が約束を守るかどうかという点に不安がある場合は、訴訟手続を活用することも検討すべきです。交渉の可能性は残しつつも、安易に妥協しすぎないというバランス感覚を持つことが、よい和解を実現するための鍵といえます。
