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物件損害は、増額の余地が少ないケースが多い
交通事故の物件損害は、一般論として、保険会社と交渉をした場合でも、増額の余地が少ない損害といえます。これは、裁判になった場合でも同様です。そして、予想される裁判所の判断を反映して、実務の動きが決まっている、といった状況といえます。
この内容について、以下で説明します。
物件損害は「見える」損害である
交通事故で損傷した車両の修理費用といった金額は、見積りを取ればある程度のところはわかります。一つの見積もりからの大きな変動は、あまり想定されません。経済的全損の場合には、車両時価額が問題となりますが、膨大なデータから、これもある程度の算定が可能です。また、物件損害では、ほとんどの場合で慰謝料が認められるケースはありません。被害車両が有名なクラシックカーであるなど、かなり特殊な事情が必要です。
このように、損害がある程度わかる以上、見積額などのデータから大幅な増額を得るというのは、それなりに困難です。
物件損害の賠償額を上げるための対策
損害項目による調整
物件損害の損害賠償について、増額の余地が小さいとしても、多少の調整はありえます。
まず、車両の年式が新しいという場合は、格落ち(評価損)の請求が可能な場合があります。また、車載物が損傷した場合には、この修理費用等をしっかりと損害に計上することで、増額の余地があります。
保険による調整
修理費用より時価額の方が安い経済的全損の場合は、賠償金を取得しても同ランクの車両が用意できないことがあります。このような場合は、相手方に「全損時修理費用差額特約」などと呼ばれる特約があるかどうかを確認してみることもおすすめです。この特約を利用すると、経済的全損の場合でも、一定額の修理費用の支払いが加害者加入の保険会社から受けられます(50万円が限度のことが多いようです)。
仮に特約があり、修理費用の支払いが可能なようであれば、車両を修理してしまう方法も検討すべきです。車両は事故車扱いになってしまいますが、新しく車を用意するよりは、経済的負担が少なく済むこともあります。被害車両の車検まであと少しといった場合には、検討の余地がある対応と解されます。
過失割合による調整
被害者にも過失がある場合には、この調整を行うことで、実際の取得額が多くなることもあり得ます。
ただし、実際には、過失割合も調整の余地は多くありません。とはいえ、5%でも過失割合が有利になれば、被害車両が高級車という場合には、最終的な賠償額が大きく変わることもあります。事故のあった現場の道路が特殊だといった場合などは、粘り強く交渉することも重要になってきます。
人身損害での増額を目指す
物件損害の交渉では、ある程度のあきらめが求められることもあります。その場合には、交通事故で怪我をしている時には、「人身損害で物件損害の分を取り戻す」という構えを持ったほうがよいときもあります。
実際には、人身損害の通院慰謝料などは、交渉による増額の余地が大きいところです。弁護士代理により金額が変化する幅も大きいため、「人身の示談の時だけは弁護士を入れる」という構えも重要になると考えます。
裁判手続で増額を目指す
費用や時間などのコスト面から必ずしもおすすめではありませんが、裁判手続により増額を目指す方法もあります。ただし、裁判は「水もの」であるため、示談交渉時よりも低額の賠償しか認められないリスクもあります。
費用面については、弁護士費用特約の利用により、法律相談費用や弁護士費用について、保険による支払いが期待できます。ただし、裁判手続に時間がかかることは間違いありません。
裁判とする場合には弁護士に相談するなどして、手続の流れやリスクを確認しておくべきでしょう。
まとめ
- 物件損害は、増額の余地が少ないケースが多い
- 物件損害の増額のためには、損害費目等に合わせた適切な交渉が重要である
- 物件損害よりは、人身損害の交渉に注力した方がよいケースもある
- どうしても納得できない場合は裁判手続も検討すべきだが、まずは弁護士に相談すべき
補足
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