判例紹介・主債務を相続した保証人による保証債務の弁済と、主債務の消滅時効の関係について(最高裁第二小法廷H25.9.13判決(H23(受)2543号))

はじめに

問題の所在

 ある債務を保証する保証人は、「保証債務」を負うことになります。これは、実際の債務者が負う「主債務」とは別の債務です。

 このため、保証人としては、主債務の消滅時効期間が経過した場合には、この主債務の時効を援用し、「主債務の消滅→付従する保証債務の消滅」という法律効果を受けることも可能です(最二小判平成7年9月8日)。保証人が自身の保証債務の弁済をしている場合で、承認(民法147条3号)により保証債務の時効が成立していない場合でも、この方法による時効成立は認められるものです

 他方、例えば親子で主債務者・保証人という関係になる場合もあります。この場合、例えば親が主債務者で、後に死亡した場合には、相続人である子には、主債務者と保証人という二つの地位が生じます。このような場合に、保証人としての相続人の振る舞いが主債務にどのような影響を与えるのか、裁判所の明確な判断はありませんでした。

今回紹介する裁判例

 主債務者を相続した保証人が、書面上などで「保証人」として債務弁済をしていたケースで、相続人が主債務の消滅時効を主張したケースです(判例タイムズ1397号、92ページ)。

 結論としては、主債務者を相続した保証人が、保証人として債務弁済をしたという振る舞いにつき、「主たる債務による債務承認(民法147条3号)である」として、消滅時効の中断を認めています。結局、債務は現存しているという判断になり、請求者の権利が認められています。

判決文について

 以下のリンクにて、最高裁の本決定を掲載したページを閲覧できます(別ウィンドウが開きます)。関心がある方は、移動先のページから、決定文のpdfファイルをご覧ください。

最高裁第二小法廷H25.9.13判決(H23(受)2543号)

事案の概要

紛争類型 債権者が主債務者を相続した保証人に支払請求した
争点 商事の消滅時効(5年)の成否
時系列1 H12.9.28、代位弁済により請求者が債権取得
時系列2 H13.6.30、主債務者が死亡、保証人が相続
時系列3 H15~H19、連帯保証債務の履行として、保証人が弁済
時系列4 H22、債権者から保証人への請求訴訟
裁判所の判断 消滅時効の成立を認めず

判決要旨

主たる債務を相続した相続人の地位について

 主たる債務を相続した保証人は,従前の保証人としての地位に併せて,包括的に承継した主たる債務者としての地位をも兼ねるものであるから,相続した主たる債務について債務者としてその承認をし得る立場にある。

主たる債務を相続した保証人の弁済の意味について

 保証債務の附従性に照らすと,保証債務の弁済は,通常,主たる債務が消滅せずに存在していることを当然の前提とするものである。しかも,債務の弁済が,債務の承認を表示するものにほかならないことからすれば,主たる債務者兼保証人の地位にある者が主たる債務を相続したことを知りながらした弁済は,これが保証債務の弁済であっても,債権者に対し,併せて負担している主たる債務の承認を表示することを包含するものといえる。これは,主たる債務者兼保証人の地位にある個人が,主たる債務者としての地位と保証人としての地位により異なる行動をすることは,想定し難いからである。

主たる債務の相続人がした保証人としての弁済の法律効果

 保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合,当該弁済は,特段の事情のない限り,主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。

判決についてのコメント

主たる債務を相続した保証人の弁済の扱いについて

 最二小判平成7年9月8日にて、保証人が保証債務を弁済していても、主債務の消滅時効が成立した場合にはこれを援用できるという判断があったため、このような紛争が生じたと解されます。実際に、控訴審までは時効の成立が認められていたため、同一人物が主債務者かつ保証人という場合でも、主債務の時効を援用できることとなっていました。

 とはいえ、相続人であり、主たる債務の存在を知りながら保証債務を弁済していたとなれば、主債務の存在を認めていると解されても、無理からぬところと解されます。これを、主債務者と保証人が同一人物ではないケースと同列に扱うことは、不自然であると解されるところです。最高裁判断はそのような趣旨からか、時効の成立を認めませんでした。

本判決の意義等

 主債務を相続した保証人が時効成立の効果を受けたいのであれば、弁済をしないという対応によるほかありません。その場合には、裁判を起こされる可能性が高まるなど、他の問題が発生することは、避けられないところです。

 今回の判断は、教科書に掲載される類の一般論を展開しています。平成25年の判決時から現在に至るまでには、民法の教科書には加筆修正があったと思われます。私が受験していたころには出ていなかった判断であり、今の受験生は当然のように知っている裁判例であると解されます。裁判例の存在自体は聞いたことがあったものの、今般改めて検討する機会があったため、本サイトでも紹介するものです。

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