目次
慰謝料発生の根拠
不法行為の概要
婚姻中に不貞行為に及んだ場合、離婚原因になります(民法770条1項1号)。
そればかりでなく、不貞に及んだ一方の配偶者は、通常、他方配偶者に賠償義務が生じます。これは、夫婦に求められる貞操義務に反しているためです(民法752条、709条)。
民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
第770条(裁判上の離婚)
1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2項 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
不貞行為などの不法行為の立証責任は、請求する側にある
慰謝料を請求する場合には、請求する側が、相手方の不貞などの不法行為について、立証する必要があります。これを、「立証責任」といいます。相手方に金銭支払いなどの法的義務を認めさせる以上、やむをえないものです。
不貞行為などは、通常隠れて行われるものですので、客観的な証拠を収集するというのは、簡単なことではありません。
代表的な証拠と証拠収集方法
不貞行為があった場合を念頭に、代表的な証拠とその証拠収集方法について、説明します。
自白
相手方の自白があれば、一番簡単です。とはいえ、言った言わないの言い争いになることもあります。このため、不貞について自白が得られた場合には、念書などに残してもらうか、自白している状況を録音するなどして、客観的にわかる形式で残しておくことが大事です。
写真
不貞行為の証拠で典型的で昔からあるものは、ホテルから出てきた時の写真といったものです。このような写真があれば、通常は、「ホテルで休んでいただけだ」といった言い訳は通用しません。
ただし、このような決定的な写真を撮ろうと思ったら、個人では大変なこともあります。探偵などに依頼することが必要なこともあるでしょう。
メール、LINE
メールやLINEのやり取りが取得できれば、当事者のやり取りの状況がかなりリアルにわかります。携帯電話にそのような記録が残っていた場合には、まずは確保することが大事です。メールやLINEの画面を写真で取ったり、スクリーンショットのデータを自分のパソコンや携帯電話に送るなどして、証拠を確保してくべきです。
携帯電話を確保すること
携帯電話は個人情報の塊である
昨今では、携帯電話に保存されているデータにより、その所有者の行動につき、相当程度のことがわかります。通話履歴、カレンダーから毎日の行動がわかり、メールの履歴、LINEの履歴からは、具体的なやり取りがわかります。まさに、頭で考えていることがそのまま情報として漏れ出しているようなことも、多くあります。
スマートフォンの場合は、指紋認証やパスワードで保護されていることも多く、情報を取得することは容易ではないことも多いと思われます。とはいえ、仮にスマートフォンの情報が一定程度わかるとなれば、不貞の立証はかなり容易になるといえます。
電子機器に強くなる必要がある
メールやLINEの情報を正確に保存するためには、適切な操作方法を知っている必要があります。そのためには、「機械に弱い」という状態は脱却する必要があります。
相手方の不貞が疑われる状態で、こちらが電子機器に弱いとなれば、うまく証拠隠滅を図られてしまうこともあります。自分がスマートフォンを使ったことが無いといった状態であれば、まずはこれを購入し、慣れることから始めるというのも、有効だと思われます。
証拠は同居しているうちに集めるべき
相手方の携帯電話などは、別居してしまうと触れることが難しくなります。また、別居してから不貞の証拠を掴んでも、「別居後で婚姻生活が破綻した後のことだ」という反論を受けることもあります。
証拠は、同居中のもの、もっと言えば婚姻生活が円満な時期の決定的な証拠であることが望ましいものです。
補足
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