自己破産手続の所要時間などについて

自己破産手続に望まれる所要時間について

はじめに

 債務をすべて清算する自己破産手続につき、手続にかけるべき望ましい時間の説明をします。

 実際には、この記事に記載した所要時間よりも短縮して手続を進めることも、可能です。ただし、急ごしらえの申請になってしまうと、どうしてもどこかで無理が生じることが多いものです。また、債権調査の結果を開示するまでに時間を要する業者の場合、その開示を待つために手続全体が止まってしまうこともあります。

 よって、この記事に記載したとおり、弁護士への相談から手続の終結までには、約7か月といった期間を見越して、じっくりと準備などを進めていくことがよいと考えます。なお、個人の自己破産手続で、同時廃止の事案を念頭においてます。

 なお、手続全体の概要については、以下の記事をご参照ください。

借金などをすべて清算する、自己破産手続の説明

相談から手続の申立まで(面談から約3か月)

初回面談時

 自己破産手続をご希望の方の場合、法律相談に来てもらった際に、当事務所では手続申請のための書式をお渡ししています。この書式は甲府地方裁判所の仕様のもので、それなりに分量があります(東京地裁とは異なるようです)。

 この書式のうち、特に作成に時間がかかるものは、家計表になります。家計表は2か月分必要であるところ、相談前から家計表を作成しているという方は、まずいません。このため、まずは習慣づけの意味もあり、相談から2か月きっちりと時間をかけて、家計表を作成してもらいます。

 弁護士は債権者に介入をして、債権調査に入ります。業者によっては債権の開示までに2か月以上の時間を要するところもあります。このため、正確な申立を目指すという場合には、相談から申立までにある程度の時間がかかるものです。

2回目の面談時

 2か月が経過するかどうかというところで、2回目の面談の機会を設けることになります。この時までに、分かる範囲で書式を埋めてもらうことになります。また、この時に、給与明細書などの提出書面についてもお持ちいただくことになります。

 クレジットカードの用途などで裁判所に疑問を持たれるおそれがあるような場合には、この2回目の面談の際などに、細かい事情確認が必要なこともあります。

裁判所への申請の準備

 資料がそろっていれば、2回目の面談から遠くない時期に、裁判所に提出する資料一式を作成することが可能です。ただし、どうしても事案によって必要書面の不足が生じがちであるため、この準備にある程度の時間がかかることが多いものです。

 順調に進めば、相談の時から3か月後ころに、裁判所への申請を行うことが可能です

申立てから破産手続開始決定まで(裁判所への申立から約1月)

破産手続開始決定まで

 裁判所へ手続の申請をすると、担当部署で一定のチェックを受けます。このチェックの後、「審尋期日」が設定されます。この時には、申立人と弁護士が連れ立って、裁判所に行くことになります。

 審尋では、担当裁判官から事情の確認を受けることになります。そして、特に問題がなければ、破産手続開始決定が出されます。

 この開始決定により、その後の差押えが禁止されるなどの重要な法的効果が発生します。手続の中では、最も重要な局面の一つといえます。

免責の確定まで(破産手続開始決定から約3か月)

免責期日の調整

 同時廃止事件の場合、破産手続開始決定と同時に、廃止決定がなされます。そして、担当裁判から、免責決定の予定が開示されます。

 通常の事案で特に問題がなければ、破産手続開始決定日から約2~3か月後に、免責決定が出されることになります

免責決定から確定まで

 免責決定が出されると、その旨が官報に掲載されます

 官報掲載から2週間が経過するまでに、債権者から何らの異議も出されないと、免責決定が確定します。この確定により、破産者は、支払ができない債務の支払い責任を免れることになります。

小括

 結局、自己破産手続を申し立てる場合には、同時廃止事件でスムーズに進んだ場合でも、面談から免責決定の確定まで、約7か月の時間がかかります

時間を短縮する方法

 手続に要する時間を短縮するためには、以下のような方法があります。

  1. 弁護士の相談前の家計表を、なんとか用意してもらう
  2. 債務に関する資料につき、手持ちの正確なものを収集してもらう
  3. その他必要資料を早期に収集してもらう

 しかし、公的機関である裁判所の手続を利用するとなると、どうしても細かい資料が必要なことがあり、時間や手間がかかりがちです。また、弁護士費用に加えて、裁判所に支払う手続費用の負担もお願いすることになります。このような多くの事務手続と金銭支払いを同時並行で行っていくというのは、無理が生じることが多いといえます。

 このため、当事務所としては、約7か月程度の時間をかけることが望ましいものと考えます。ただし、既に給与差押えを受けているなど、早期の手続申立が必須の事案という場合には、別途の考慮をいたしますので、ご相談ください。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

債務整理

自己破産手続の説明