東日本大震災よる原子力発電所事故による損害に関する消滅時効期間の扱い
平成25年12月11日施行の法律
福島第一原子力発電所の事故の損害賠償請求権につき、時効期間を10年とする特別措置法が成立しました。この措置法では、除斥期間につき、損害発生から20年とする規定も盛り込まれたようです。
なお、法律の名前は、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」(原賠時効特例法)という、非常に長いものです。
通常の不法行為との規律のちがい
民法上の不法行為につき、時効期間は損害及び加害者を知ったときから3年です(民法724条)。
また、不法行為時から20年が経過した場合には、「損害及び加害者を知った」といった事情がなくても請求権がなくなることとされています。
民法724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
今回の特例法は、この時効期間と除斥期間につき、特則を認めるものです。
除斥期間につき、不法行為時ではなく損害発生時を起算点にするという扱いは、特筆すべきものといえます。
また、不法行為の時効期間3年についていえば、は一般論としても「短い」との批判がありました。あれほどの大地震と大事故ですから、3年で法律的に適切に振舞えというのは無理な話だと思われます。
最終的な負担者の議論は別に、現実に損失を受けた方が適切な賠償を受けるのは当然のことです。そのための措置として、まずは望ましい立法がなされたものと考えています。