司法修習地について
司法試験に合格すると、司法修習に参加しなければなりません。これは、いわゆるOJT研修のようなものです。
司法修習の受け皿は、日本各地の地方裁判所になります。司法修習を行う司法修習生は、裁判所で傍聴をしたり、検察庁や弁護士事務所に行き、法曹三者それぞれの切り口から実務を見ることになります。
この司法修習の土地により、特有の事件というものがあります。
当職事務所の弁護士の司法修習地は、長崎県でした。長崎県には、やはり長崎県特有の事件があります。原爆訴訟が典型ですが、他にも、諫早湾に関する事件といったものも挙げられます。
国営諫早湾干拓事業に関する司法の動きについて
国営諫早湾干拓事業について、新たな動きがありました。
前記事業については、国に開門調査を命じる福岡高裁の決定がすでに確定しています。ただし、このほど、開門を差し止める仮処分決定が長崎地方裁判所でなされたのです。福岡高裁が示した開門期限は、平成25年12月20日でした。とはいえ、これと矛盾する内容の仮処分が出されたことにより、期限までに開門が実施されるかどうかの見通しが不明になったと思われます。
諫早湾干拓事業については、典型的な公共事業の失敗例との評価が可能と解されます。漁業へどれだけの悪影響を与えたかといったレポートは、すでに大量にあるものと思われます。
しかしながら、干拓はすでに実施されていて、新たに基盤を有してそこに生活している人たちがいます。この人たちの生活を壊してまで開門調査を行うことが果たして許されるのか、私にはわかりません。
政治的難問と司法の食べ合わせの悪さについて
とりわけ日本の政治家に、諫早湾干拓事業のような難問を解くだけの力量があるとは思われません。ただし、その代表者を選んだのは国民ですから、国民にかえってくる問題ともいえます。
福岡高裁の開門決定についても、「政治レベルで計画の変更ができなかったために、裁判闘争によるしかなかった結果」と解されます。そして、調整ができていないところに開門決定があっても、今回のように仮処分申請がなされるというのは、当然の結論と思われます。
繰り返しになりますが、この事案に対する適切な解がどこにあるのか、私にはわかりません。とはいえ、政治が解決できなかった重大な社会問題につき、裁判でしか「答え」を出せないと思われる現状には、苛立ちを感じずにはいられません。