不特定多数の消費者に向けられた事業者等の働きかけにつき、消費者契約法12条の「勧誘」に当たりうると判示た最高裁判決(最判三小H29.1.24)

はじめに

消費者契約法について

 消費者保護の目的で、消費者契約法という法律が存在します。例えば、消費者にとって不利な契約であれば、これを無効とするなどと定められています(消費者契約法10条)。

 今回問題となったのは、事業者が商品の重要事項について事実と頃なることを告げた場合などに該当する「不実告知」に関するものです。「不実告知」による「勧誘」がなされた場合、国から認可を受けた適格消費者団体は、その「勧誘」を差し止めることが可能になります(消費者契約法4条、12条)。

消費者契約法第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

1 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

消費者契約法第12条(差止請求権)

 適格消費者団体は、事業者、受託者等又は事業者の代理人若しくは受託者等の代理人(以下「事業者等」と総称する。)が、消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して第四条第一項から第三項までに規定する行為(同条第二項に規定する行為にあっては、同項ただし書の場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を現に行い又は行うおそれがあるときは、その事業者等に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし、民法 及び商法 以外の他の法律の規定によれば当該行為を理由として当該消費者契約を取り消すことができないときは、この限りでない。

今回紹介する裁判例について

 消費者契約法12条にいう「勧誘」について、その定義規定はありません。このため、「勧誘」の範囲について争いがあったところ、これまで、チラシなどの不特定多数に対する働きかけの場合は、この「勧誘」に該当しないという考え方もありました(「勧誘」は、個別的に行われるものを指す、という考え方があったようです)。実際に、今回紹介する判決の高裁段階では、不特定多数に対するチラシ配布は「勧誘」当たらないと判断していました。

 最高裁の判断では、消費者契約法の趣旨などを参照して、チラシ配布などの不特定多数に対する事業者からの働きかけであっても、その一事で消費者契約法12条にいう「勧誘」に当たらないことはない、という判断をしています(判例タイムズ1435号99ページ)。

最高裁第三小法廷平成29年1月31日判決(平成28年(受)1255号)

事案の概要

当事者など 適格消費者団体がチラシ配布の差止を求めた
争点 チラシ配布が消費者契約法12条の「勧誘」に当たるか
原審の内容 チラシ配布は「勧誘」に当たらない
最高裁の判断 チラシ配布も「勧誘」に当たりうる
考慮事項 チラシ配布なども個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることがある
特記事項 差し止め請求自体は、必要性がないとの理由で認められず

判決の要旨

消費者契約法12条の「勧誘」の意味について

 「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ、例えば、事業者が、その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは、当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから、事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは、上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。

消費者契約法12条の「勧誘」についての裁判所の考え方

 事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。

本件の結論

 「前記事実関係等によれば、本件チラシの配布について上記各項にいう「現に行い又は行うおそれがある」ということはできないから、上告人の上記各項に基づく請求を棄却した原審の判断は、結論において是認することができる。」

として、チラシ配布の差止までは認めなかった。

判決に対するコメント

本判決の意義について

 本判決により、「チラシ配布は不特定多数に対するものだから、消費者契約法12条の差止請求の対象にならない」ということはなくなりました。チラシ配布以外にも、伝統的な新聞広告や、昨今問題となることが多いインターネット上の不特定多数に対して向けられている宣伝についても、差止が許容される可能性がある、ということになると解されます。

適格消費者団体による訴訟

 本件は、適格消費者団体による広告の差止請求訴訟です。適格消費者団体とは、「不特定かつ多数の消費者の利益のために消費者契約法の規定による差止請求権を行使するのに必要な適格性を有する法人である消費者団体」とされます(消費者契約法2条)。

 本判決により、適格消費者団体による広告などの差止請求に関して、「勧誘」の要件がないことで棄却されるリスクは、一定程度低減したといえます。すなわち、同種の差止請求の裁判を起こすためのハードルが下がったといえます。消費者保護の観点からは、望ましい統一的な判断だったと解されます。

補足

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この記事を書いた人

斉藤圭
斉藤圭弁護士・舞鶴法律事務所(山梨県甲府市)
地元山梨で舞鶴法律事務所を営んでいます。
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