「内容証明」という言葉を聞いたことがある方もいると思われます。それでは、内容証明というものには、どのような効力があるのでしょうか?また、個人名で送るのと、弁護士が送るのとで、どのように違うのでしょうか?
ここでは、内容証明について説明します。また、内容証明が必要になるシーンや、弁護士に依頼する場合のメリットをご紹介します。
目次
内容証明とは?
「内容証明」は、「内容証明郵便」と記載した方が分かりやすいものです。内容証明郵便というのは、以下の内容を、郵便局が証明してくれる制度です。
ア いつ郵便を発送したか
イ どんな内容の文書を発送したか
ウ 郵便を誰から誰へ差し出したか
この証明は、「送り主側が作成する謄本」を、差出人と郵便局で同じ文章を保管することで行います。なお、「謄本」というのは、「原本の内容をそのまま写しとった文書(コピー)のことです。
内容証明郵便は、郵便局で手続をすれば、誰でも送ることができます。もちろん、この発送につき、弁護士に依頼することもできます。法的に正確な文書を作成することや、送付後の交渉を依頼することも含めて、内容証明郵便の作成を弁護士といった法律の専門家に依頼するケースも、多くあるように思われます。
内容証明の注意点〜文書の内容が真実でどうかを証明するものではない
内容証明郵便は、郵便局が、内容文書の存在を証明してくれるものであり、内容の真偽を証明するものではありません。「〇年〇月〇日にこのような文書が発送された」という証明はできますが、「送られた文書の内容が正しい」という証明にはならないということです。
よって、内容証明郵便を送ること自体に法的な効力があるわけではないことに留意する必要があります。「発送した内容証明郵便に、どのような意思表示が示されているか」ということが重要です。
内容証明のメリット
内容証明郵便は、本文中に日本郵便株式会社の証明印が印字されているといった事情もあり、受け取った側に心理的なプレッシャーを与えられるという効果が期待できます。発送した側からすれば、「相手方に対して毅然とした態度を示す」ことができるといえます。
また、いつ、どんな内容の文章を誰に送ったかの証拠があると、「郵便を受け取った、受け取らない」の水掛け論を回避できるため、その後の民事手続や訴訟に有利に働くことがあります。
内容証明を弁護士に依頼するメリット
内容証明郵便の作成を弁護士に依頼すると、法的に正確な書面を作成してもらえるというメリットがあります。上記のとおり、内容証明郵便は、書かれた内容の真偽は証明してくれませんので、この内容の部分を確実にすることが期待できます。
また、内容証明を書面で提出する場合には、郵便局の定める書式によらねばらなりません。この書式では、1枚あたりの行数や文字数が細かく決まっていて、それなりに対応が面倒なものです。「電子内容証明郵便」という方法もあり、そこではある程度書式の縛りは緩やかですが、インターネット上でデータのやり取りをしなければならず、慣れていないと使いこなすことは難しいものです。このような手続を一任でき、自身の時間や精神的負担を大幅に軽減できるというのも、メリットといえます。
また、弁護士名で内容証明郵便を差し出すことで、すでに弁護士に相談していることを伝えることもできます。請求者の請求意思が強いということを示し、相手に心理的なプレッシャーを与えることを期待できます。その結果、これまで対応してくれなかったことに対応してくれる可能性が出てくるところです。ただし、この点については、両面の評価があります。場合によっては、弁護士名の内容証明郵便により、相手方の態度が硬化するケースもありますので、断定的なメリットとはいえないところです。
弁護士に依頼する場合の一般的な費用
内容証明郵便に弁護士の名前が出るかどうかという点で、費用が変わることが多いでしょう。また、「内容証明郵便の発送だけで、その後の交渉は担当しない」という場合だと、依頼として受けない事務所も多くあろうかと思われます。この辺りの内容は、相談する弁護士によくご確認ください。
弁護士名を出さない内容証明郵便の発送であれば、法律相談の延長で対応するということもあろうかと思われます。法律相談費用となると、30分5,000円(消費税別)という金額が、一つの目安になろうかと思われます。
弁護士名を出す内容証明郵便で、その後の交渉は担当しないという場合は、50,000円(消費税別)という費用で対応する事務所もあるように思われます。とはいえ、上記のとおり、その後の交渉の依頼がない場合には対応できないという事務所も多いと思われますので、ご注意ください。
弁護士名を出す内容証明郵便で、その後の交渉も担当するという場合には、一般的な請求事件として費用の算定がなされるといえます。請求額にもよるところですが、200,000円(消費税別)以上の費用ということも、あろうかと思われます。
内容証明郵便が使われるケース・具体例
内容証明郵便が使われる事例は、以下のようなものです。
- 未払い費用・未払い賃金の督促
- 借金返済の督促
- 契約の解除通知
- 慰謝料の請求
内容証明の作り方・記載内容
内容証明郵便には、以下の事項を記載することになっています。
- 送付する日付(年月日)
- 内容文書(相手に送付するもの)とその謄本2通(差出人と郵便局が各1通ずつ保存するもの)
- 差出人および受取人の住所氏名を記載した封筒
内容証明を送った後の流れ
個人で内容証明を送った場合
自身で内容証明を送った場合、それでも相手が対応してくれないとなると、別途請求をしていく必要があります。相手方と直接交渉をする方法や、弁護士など第三者を介して交渉をするという方法が考えられます。
その場合に、内容証明郵便は、発送者が請求の意思表示をした事実を示す証拠資料の一つとなります。
内容証明郵便を経て相手から連絡があっても、自分自身で対応するとうまく交渉できなかったり、トラブルになるという場合も想定されます。その場合には、「直接会うことは避ける」、「交渉期限を設け、それを過ぎたら専門家に相談する」といった判断が必要なこともあります。
弁護士に依頼して内容証明を送った場合
弁護士に依頼して内容証明を送った場合も、それだけで問題が解決しないという場合には、別途請求手段を検討する必要があります。弁護士にて相手方と交渉を継続する方法もあります。
他にも、内容証明郵便や、その他の収集証拠を基に、訴訟や調停といった裁判所を利用した手続に移行するという方法もあるところです。