裁判所基準の入通院慰謝料の算定に用いられる表について

別表Ⅱ

別表Ⅱは、むち打ち症のうち他覚的所見がない場合に用いられる

 交通事故の損害賠償基準のうち、最も高額とされる裁判所基準を収録した書籍は、「赤い本」と呼ばれます。この赤い本には、入通院慰謝料を算定する際に用いられる「別表」というものがあります。

 「別表」はⅠとⅡがありますが、最初に別表Ⅱの内容を紹介します。これは、交通事故の被害者の症状で最も多いのがむち打ち症であり、その場合は別表Ⅱが用いられることが多いためです。すなわち、実務上は別表Ⅱがオーソドックスな表ということになるためです。

別表Ⅱの具体的な内容

 別表Ⅱの内容は、以下のとおりです。数値の単位は、「万円」です。縦軸が通院期間、横軸が入院期間になります。なお、入院が15か月の場合まで表は規定されていますが、スペースの都合上、省略しています。実務上も、そこまで長期の入院が問題になるケースは、かなり少ないところです。

通院\入院 0月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
0月   35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204  
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200    
13月 120 137 152 162 173 181 189 195      
14月 121 138 153 163 174 182 190        
15月 122 139 154 164 175 183          

別表Ⅱの使い方

 別表Ⅱの使い方は、別の記事で説明しています。通院期間と通院日数を比較して算定に用いる数値を決めて、入院日数と交差する点で慰謝料の金額を決めていくことになります。

裁判所基準の損害賠償算定(慰謝料)

別表Ⅰ

別表Ⅰは、他覚的所見がある症状の場合に用いられる

 別表Ⅰは、「慰謝料算定で原則として用いられる表」とされます。とはいえ、最も事案の多い、他覚的所見のないむち打ち症の場合は、別表Ⅱが使用されます。このため、上記の通り、実務上では原則と例外が入れ替わっているような状況といえます。

 別表Ⅰでは、別表Ⅱと比較すると、高額な慰謝料が算定されることになります。

別表Ⅰの具体的な内容

 別表Ⅰの内容は、以下のとおりです。数値の単位は、「万円」です。入院が15月分まで実際にはあることは、別表Ⅱと同様です。

通院\入院 0月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
0月   53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332  
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326    
13月 158 187 213 238 262 282 300 316      
14月 162 189 215 240 264 284 302        
15月 164 191 217 242 266 286          

別表Ⅰの使い方

 別表Ⅰの使い方も、別の記事で説明しています。通院期間と通院日数を比較して算定に用いる数値を決めて、入院日数と交差する点で慰謝料の金額を決めていくことになります。

 なお、別表Ⅱとは、治療期間の算定について、微妙に違うルールがあります。

裁判所基準の損害賠償算定(慰謝料)

具体例

 慰謝料算定の方法を説明したページと同様の具体例につき、以下で紹介します。

事例1  通院日数 通院期間 治療日数 慰謝料 備考
自賠責基準 50(入院0) 120 100 100×4,200=420,000 50×2<120 
別表Ⅱ事案 50(入院0) 120 120 670,000 50×3>120
別表Ⅰ事案 50(入院0) 120 120 900,000 50×3.5>120
事例1  入院日数 通院日数 通院期間 治療日数 慰謝料 備考
自賠責基準 30 60 200 180 180×4,200=756,000 (30+60)×2<200 
別表Ⅱ事案 30 60 200 180 1,130,000(入院1月,通院6月) 60×3<180
別表Ⅰ事案 30 60 200 200 1,550,000(入院1月,通院6.7月) 60×3.5>200

具体例から導かれること

 裁判所基準の算定によれば、通常は、自賠責保険基準よりも十万円単位で高額な慰謝料が算定されます。

 なお、通院が長期になると、自賠責保険基準の慰謝料が裁判所基準に近づくこともあります。ただし、その場合には、治療費も高額になるため、傷害部分の自賠責保険限度額である120万円を超過することが通常です。この限度額の事情もあり、結局、「裁判所基準の賠償額の方が自賠責保険基準額よりも相当高額になる」という原則は変わりません。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

損害賠償の裁判所基準について