はじめに

面会交流

 離婚する夫婦に子どもがいる場合、親権者を決める必要があります。そして、非親権者の場合に典型ですが、実際の子どもの監護に当たらない非監護親と、子どもの定期的な面会について決めることがあります。これが「面会交流」と呼ばれる手続です。

 面会交流について当事者間の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所の調停手続で、これを協議することがあります。調停の話し合いで合意が難しい場合には、裁判所の審判手続により、裁判官に面会交流について定めてもらうこともあります。

適正な面会交流の実現のために

実現しない面会交流

 実際には、離婚する夫婦の場合、母親が親権者(わかりやすさの便宜より、監護親と同義の趣旨で使用、以下同じ)になるケースが多いものです。そして、父親が面会交流を希望しても、裁判所の取り決めに母親が従わないことがあります。

 この際には、母親が以下のような主張をすることが多いものです。

  1. 子どもが、父親と会いたくないと言っている
  2. 子どもの体調が良くない(精神的な不調も含む)
  3. 再婚して、新しい父親に馴染んでいる

 面会を拒否する事情としては、いずれも理解できるものです。このような主張により、母親の自発的な対応が受けられず、面会交流ができない父親は、一定数いるとされています。他方で、面会を行う中で、子どもの奪い合いが再燃するケースも存在します。

 このような背景もあり、適正な面会交流の実現というのは、なかなか解決が難しい社会問題と理解されています。

裁判所による面会交流の強制手段

 一般論として、裁判所の審判や判決がある場合は、「強制執行」が可能です。お金の貸し借りの事案であれば、判決に基づき強制執行をして、債務者の給与や預貯金を差押えする方法もあります。

 ただし、面会交流については、これを強制する方法があるのかどうか、長らく問題となっていました。とはいえ、子どもの福祉に反するという観点もあり、「直接強制」(いわば、第三者が関与して、無理やり親子を会わせるといったもの)という方法は、許されないという考えが一般的です。

 他方で、「間接強制」であれば、許されるという考えがあります。これは、例えば、親権者に対して、「非親権者と子を面会させよ、面会させない場合には、不履行1回につき、金5万円を支払え」などと命じるものです。親権者に対して、金銭支払いを免れるために、面会交流に自発的に応じさせることを目的としたものです。

 この間接強制の方法による強制執行は、下級審段階では認める事例もありました。

紹介する裁判例について

 今回紹介する決定例は、最高裁として、面会交流の定めに基づき、間接強制を認める判断をしたものです(判例タイムズ1391号122ページ)。

 本決定では、「面会交流を認める審判」が、面会の方法を特定して定めている(給付の特定に欠けることがない)場合には、間接強制が許されうると判断しています。

事案の概要

争点 面会交流につき間接強制は可能か
原審の判断 間接強制を認めた
最高裁の判断 間接強制を認めた(面会交流の不履行1回につき5万円の支払い義務を課す)
考慮要素 面会交流を認める審判がある
考慮要素2 審判では、面会交流の日時、頻度、各回の面会交流時間、子の引き渡しの方法等が具体的に定められている
特記事項 本決定時、子どもは7歳だった

決定の要旨

面会交流を認める審判による間接強制が許される場合

 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。

子が面会を拒絶しているという事実の取り扱い

 子の面会交流に係る審判は,子の心情等を踏まえた上でされているといえる。したがって,監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判がされた場合,子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは,これをもって,上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し,又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格 別,上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。

面会交流の条項抜粋(原原審より)(参考)

面会交流の日程、回数、場所、時間について

  1. 月1回とし、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで
  2. 場所は、申立人(本件債権者。以下同じ。)自宅以外の場所とし、未成年者(本件未成年者。以下同じ。)の福祉を考慮して申立人が定める。

面会交流の方法

  1. 未成年者の受け渡し場所は、相手方(本件債務者。以下同じ。)自宅以外の場所とし、当事者間で協議して定める。協議が調わないときは、JR札幌駅東口改札付近とする。
  2. 相手方は、面会交流開始時に、受け渡し場所において、未成年者を申立人に引き渡す。
  3. 申立人は、面会交流終了時に、受け渡し場所において、未成年者を相手方に引き渡す。
  4. 相手方は未成年者を受け渡す場面の他、申立人と未成年者の面会交流には立ち会わない。

学校行事への参列について

 相手方は、申立人が未成年者の入学式、卒業式、運動会、学芸会、学習発表会、文化祭などの学校行事(父兄参観日を除く)に参列することを妨げてはならない。

代替日について

 未成年者の病気などやむを得ない事情により上記の日程で面会交流を実施できない場合は、申立人と相手方は、子の福祉を考慮して代替日を定める。

確認条項

 申立人と相手方は、未成年者の福祉に慎重に配慮し、申立人と未成年者の円滑な実施につき互いに協力する。

事情変更の余地について

 申立人と相手方は、未成年者の成長などの事情の変更が生じた場合は、面会内容(宿泊の可否、面会場所等)について、誠実に協議する。

決定に対するコメント

面会交流の審判による強制執行が可能であること

 最高裁の本決定により、家庭裁判所の審判により、面会交流の間接強制が許される場合があることが、明らかにされました。

 実際に、本決定があってから、面会交流について、複数の間接強制の申し立てがなされているというのが実情です。なお、面会交流の取り決めによる間接強制は、審判ではなく調停調書による取り決めの場合でも可能であると理解されています

間接強制が許されない場合

 実際には、間接強制が許されななかった事案もあります。

 決定例では、審判書が不特定であるといった理由や、面会交流自体が実現不可能である(履行不能)といった理由で、裁判所が間接強制を認めなかったものがあります。

審判書が不特定であるとした事例(H25.3.28最高裁決定(H24(許)41号)

 本件と同日の最高裁決定で、「間接強制を認めない」という判断をした事例です。面会交流に関する審判書の記載の趣旨は、以下のようなものでした。

 裁判所は、審判書には子の引き渡しに関する規定がないなど、給付の特定が充分でないため、間接強制ができないとしました。

頻度及び日時

 1箇月に2回,土曜日又は日曜日

面会時間

 1回につき6時間面会交流をすることを許さなければならない

審判書が不特定であるとした事例(H25.3.28最高裁決定(H24(許)47号)

 本件と同日の最高裁決定で、「間接強制を認めない」という判断をした事例です。面会交流に関しては調停が成立していたところ、この記載の趣旨は、以下のようなものでした。

 裁判所は、面会時間に延長の余地があるとされていて、必ずしも給付内容が特定されていないとしています。加えて、特記事項で協議の余地を残していることから、調停の内容は大枠に過ぎず、具体的な面会交流に関する内容は特定されていないとしています

 結局、給付を定めた条項が不特定であるとの理由で、間接強制を認めませんでした。

頻度及び日時

 2箇月に1回程度,原則として第3土曜日の翌日

面会時間

 半日程度(原則として午前11時から午後5時まで),ただし,最初は1時間程度から始めることとし,長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする

子の引き渡し方法

 面会交流の開始時に所定の喫茶店の前で長男を父親に会わせ,父親は終了時間に同場所において長男を母親に引き渡すことを当面の原則とする

特記事項

 面会交流の具体的な日時,場所,方法等は,長男の福祉に慎重に配慮して,協議して定める

子どもの面会拒否の意思が強固であり、面会交流が履行不能であるとした事例(H29.4.28大阪高裁決定(H29(ラ)209号)

 大阪高裁の決定で「間接強制を認めない」という判断をした事例です(確定済)。

 面会交流に関する審判書の記載は、特定充分であるとしています。他方で、子の年齢が15歳であり、面会交流を拒否する強固な意思表示をしていました。そして、その意思が本人の真意によるものであると判断されています(洗脳などの可能性を否定)。

 結局、未成年者本人の意思に反して面会を強いることは子の福祉に反するものであるため、履行不能の債務である以上、間接強制もできないという判断に至っています。

 平成25年の最高裁の本決定に関しては、未成年者の年齢が7歳でした。この年齢の差などにより、面会交流を強制することが子の福祉に反するかどうかの評価が分かれたものです。

まとめ

 調停調書や審判書により面会交流の間接強制を行う場合には、条項を詳細に決める必要があるということになります。本決定の条項抜粋からもわかる通り、この特定は、かなり厳密にする必要があります。日時、面会交流時間、引き渡し方法の特定が必要で、引き渡し方法については具体的な地名なども定めるべきでしょう

 他方、協議の余地を残すなど、あいまいな規定をすることは望ましくない、ということになります

 しかし、このような特定された条項が求められるとなると、柔軟な対応を可能にする家庭裁判所の調停制度が損なわれることにならないかという疑問もあり得ます。

間接強制は最後の手段

 面会交流につき間接強制が許されるとしても、面会交流を実現する方法としては、最後の手段として捉えるべきものと考えます。親権者の中には、間接強制のお金を払ってでも面会交流を拒否する人もいます。そのような状況になれば、さらに親権者に面会交流を促すことは、ほとんど絶望的でしょう。

 実際には、間接強制のお金を払い続けることができる親権者は、多くないでしょう。母親が親権者になる典型的な事案では、子どもの養育費を受領しているケースが多いものです。この場合、養育費を受領しても、面会を拒絶することで、間接強制金で養育費相当額が消えてしまうという状況もありえます。

 かような事態となれば、当事者間の感情的争いが激しくなり、自発的な面会交流の実現がより遠のくおそれもあります。親権者が非監護親の悪口を子どもに言うとなれば、子どもの福祉にとってもマイナスというべきです。

 親権者の対応が不誠実であり、間接強制を申し立てざるを得ない事案があることは、否定できません。とはいえ、子どもの健全な発達にも関連する面会交流に関しては、できる限り平穏な話し合いで決めるべきといえるでしょう。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

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