最近の最高裁などの重要判例

はじめに

 平成27年ころ以降の最高裁判所等の判断のうち、実務上特に重要と解されるものを紹介します。

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最近の最高裁などの重要裁判例

事件情報 争点及び判断 考慮要素 特記事項
最高裁大法廷H29.3.15判決(H28(あ)442号)

【刑事】いわゆるGPS捜査が強制処分か否か

GPS捜査は強制処分にあたる

GPS捜査は個人のプライバシーを侵害しうる、

GPS捜査には立法的な措置が望ましい

本判決後、警察はGPS捜査を自粛した
最高裁H28.12.19決定(平成27年(許)11号)

【遺産分割】預貯金が遺産分割の対象となるか

遺産分割の対象となる

預貯金の現金類似性を重視したと解される

柔軟な遺産分割調停を可能にする、極めて重要な判断、

最高裁の枠組みによると、請求者は原審までと比較して約2,000万円有利

最判第三小法廷H29.1.31決定(H28(許)45号)

【インターネット】検索結果の削除請求の当否

→事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべき

→結論としては削除を認めず

犯罪関連事実は社会的非難強く、公共の利害に関する事項である、

検索結果が示される場合は多くなく、事実が伝達される範囲は限定されている

実際の削除の可否は、総合判断により決せられるもので、裁判所の裁量は広いと解される

東京地裁H28.12.20判決(H28(ワ)34083号

【インターネット】カラオケ動画のアップロードについて

→カラオケ会社作成の動画が含まれる場合に、著作権法違反に基づき公開を取り下げ請求を認容した

カラオケ会社の動画をアップロードすることは、著作隣接権(著作権法96条の2)に反する カラオケ会社の動画を使用している場合には、同種の動画のアップロード全般に当てはまる判断である
最高裁第三小法廷H29.1.31判決(H28(受)1255号)

【養子縁組】節税目的の養子縁組の有効性

→節税目的というだけでは無効にならない、本件縁組は有効

節税目的と養子縁組の縁組意思とは併存し得る

節税養子の有効性に関する初めての最高裁の判断、

縁組の無効を主張する側が「縁組意思がないこと」を立証すべきという判断と解される

最高裁第一小法廷H28.3.31決定(H26(あ)1857号)

【刑事】虚偽の供述調書と証拠偽造罪の成立

→原則として証拠偽造罪は成立しない(傍論)、

→事例判断として証拠偽造罪の成立を認める

警察官と共謀して虚偽調書を作出している

傍論ながら、虚偽の供述調書と証拠偽造罪の成立に関する初めての最高裁の判断である、

警察官2名と証拠偽造罪の共同正犯を認定

最高裁大法廷H29.11.29判決(H28(あ)1731号)

【刑事】強制わいせつ罪の成立に「性的意図」は必要か

→不要(昭和45年の最高裁判例を破棄)

社会の性犯罪に関する受け止め方を考慮、

性的意図は犯罪を評価する際の考慮要素ではあるが、一律の犯罪成立要件ではない、とした

被告人は山梨県内で犯行に及んだ

最高裁H25.3.28決定(H24(許)48号)

【面会交流】面会交流を定めた審判書による強制執行(間接強制)の可否

→給付の内容が特定されている場合には、間接強制も可能

→監護親に、面会交流の不履行1回につき金5万円の支払義務を認めた高裁の決定を維持

面会交流につき、以下の内容に関する審判書の特定が充分であれば、間接強制は認められうる

  1. 日時または頻度
  2. 各回の面会交流時間の長さ
  3. 子の引き渡しの方法など

本決定時、子どもの年齢は7歳だった、

同日の決定で、特定が不足していると判断された他の事案につき、間接強制を認めなかった

最高裁H29.12.5決定(H29(許)17号)

【子の引き渡し】民事訴訟による子の引き渡しの可否(親権者父→監護権者母)

→民事訴訟による方法自体は適法とした

→離婚後の経緯より、権利の濫用に当たるとして、引き渡しを認めなかった

以下の事情で、民事訴訟の方法による子の引き渡しを認めなかった

  1. 離婚後、4年母が子を監護(子は7歳)
  2. 母が親権者変更の申し立てを行っている
  3. 民事訴訟による合理的な理由がないとされた
元夫婦の間で、親権者と監護権者が分離した類型

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執筆・監修: 弁護士 斉藤 圭

執筆・監修: 弁護士 斉藤 圭

弁護士(登録番号:42442)。 所属団体:山梨県弁護士会。地元山梨で舞鶴法律事務所を2012年2月に設立。 交通事故や離婚問題、債務整理などトラブルや悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。