はじめに

 今回紹介する裁判例は、定期預金債権及び定期積金債権につき、遺産分割の対象になると判断した、最高裁判決です(判例タイムズ1437号67ページ)

 この判決は、普通預金について遺産分割の対象になると判断した、平成28年12月19日最高裁の大法廷決定に連なる判断と言えるものです。

判例紹介・相続に関し、預貯金債権につき、遺産分割の対象となるとした判断について(最高裁H28.12.19決定、平成27年(許)11号)

本判決の影響

 結局、相続財産のうち、「他の遺産とは別に、預貯金だけを法定相続分で金融機関に対して請求する」といった方策は、今後は利用することが難しいということになります。

 また、遺産分割調停で、「預貯金だけは、他の遺産とは別の扱いにしたい」という一部の相続人の主張も、通らないことになります。

 相続財産の種類が普通預金だろうが定期預金だろうが、この理は変わらない、といえます。

平成29年4月6日最高裁第一小法廷判決(平成28年(受)579号)

判決の要旨

普通預金債権の扱いについて(確認的な言及)

 共同相続された普通預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないというべきである(最高裁平成27年(許)第11号同28年12月19日大法廷決定・民集70巻8号登載予定)。

定期預金及び定期積金の性質

 定期預金については、預入れ1口ごとに1個の預金契約が成立し、預金者は解約をしない限り払戻しをすることができないのであり、契約上その分割払戻しが制限されているものといえる。

 そして、定期預金の利率が普通預金のそれよりも高いことは公知の事実であるところ、上記の制限は、一定期間内には払戻しをしないという条件と共に定期預金の利率が高いことの前提となっており、単なる特約ではなく定期預金契約の要素というべきである。他方、仮に定期預金債権が相続により分割されると解したとしても、同債権には上記の制限がある以上、共同相続人は共同して払戻しを求めざるを得ず、単独でこれを行使する余地はないのであるから、そのように解する意義は乏しい(前掲最高裁平成28年12月19日大法廷決定参照)。この理は、積金者が解約をしない限り給付金の支払を受けることができない定期積金についても異ならないと解される。

定期預金債権及び定期積金債権についての判断

 共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

本決定に関するコメント

裁判実務の変更(の余波)

 預金債権が遺産分割の対象になるという理は、平成28年12月19日最高裁決定で示されたとおりです。同判決では、ゆうちょ銀行の定期貯金についても、遺産分割の対象になると判断していました。その理に照らせば、ゆうちょ銀行以外の定期預金も同様の扱いになることは、明白なものでした。

 この内容を具体的事案の判断で示したというのが、本件となります。 

 結局、現時点では、預貯金等を遺産分割手続から意図的に外すことはできなくなりました。また、遺産分割手続と独立して、金融機関に対して預貯金債権の法定相続分を訴訟などで請求したとしても、その請求は棄却されることになります。

 このような裁判での請求は、平成28年12月19日最高裁決定の以前はほぼ自動的に認容されていた事案ですので、実務の大きな変更ということになります。

 これを知らずに、今後、裁判所に請求訴訟を提起すると、裁判所から取り下げを勧告される可能性も高いところです。弁護士がこれを行うと、恥をかくことにもなりかねません。

補足

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