清算価値保障原則とは

清算価値保障原則の説明

 居住用住宅を守りながら他の債務を圧縮する手続である住宅資金特別条項付個人再生手続を申請する際には、「清算価値保障原則」を守る必要があります。これは、概略、再生手続により債務の圧縮を受ける場合でも、再生手続開始決定時に持っている財産分は支払う必要があるという原則のことです。

 清算価値とは、再生債務者が自己破産手続を取った場合であれば、債権者に分配された金額のことをいいます。破産手続の場合、一部の自由財産を除いて、不動産や生命保険などの財産的価値があるものはお金に換え、可能な限り債権者に分配します。この分配が不可能になった段階で、初めて破産が認められます。

 債務者が破産手続を取ったか再生手続を取ったかで、債権者に対する分配額が変わっては不公平です。このため、破産手続と同様の基準で清算価値を算出し、最低限この金額分は分割で支払をせよという清算価値保障原則を守ることが、再生債務者には求められます。

 なお、住宅資金特別条項付個人再生の手続全体の概要については、以下のリンク先の記事にて説明しています。

住宅を守りながら債務整理をする、住宅資金特別条項付個人再生手続の説明

清算価値の計算方法

 清算価値の計算方法は、裁判所によっても異なります。主要な内容として、おおむね、以下のような財産が問題となります。

 再生手続開始決定時に債務者が保有する財産の合計額(「清算価値」)と、法的に定められている圧縮割合で債務額を計算し直した結果を比較し、高い方の金額を総支払額として、3~5年で分割弁済することになります。

財産項目 金額 備考
現金 99万円を超える分 運用によっては全額清算価値に算入することもある
預貯金 20万円を超える分 同上
保険の解約返戻金 20万円を超える分 同上
退職金債権 評価額の8分の1 16分の1とする運用もある
自動車 評価額 年式が古ければ考慮しない(普通車6年、軽4年が目安)
不動産 ローン金額を超える分 現在の不動産市場では、ローン付き不動産の評価はゼロ円となることが多い

債務圧縮のルール(参考)

 下線を引いた範囲の事例が多いと思われます。

債務額(住宅ローン以外の債務の合計額) 支払金額
債務が100万円以下 債務全額
100万円を超え500万円以下 100万円
500万円を超え1,500万円以下 債務の20%
1,500万円を超え3,000万円以下 300万円
3,000万円を超え5,000万円以下 債務の10%

事例での説明

 清算価値保障原則は、原則を言葉で説明してもわかりにくいものと思われます。以下では、具体例により説明します。

具体例1

  • 住宅ローン以外の借入金:600万円
  • 住宅ローン残高:2,000万円、不動産評価額:1,500万円
  • ローンの毎月の支払額:8万円
  • 預貯金合計:30万円
  • 生命保険の解約返戻金:60万円
項目 金額等 備考 
住宅ローン以外の債務総額 600万円  借入金総額
圧縮後の金額 120万円 80%圧縮 
清算価値 90万円 預貯金+解約返戻金
住宅ローン以外の支払予定債務額 120万円 120万円と90万円の高い方
5年分割の場合の支払予定額 2万円 60回払い
実際の債務圧縮率 80%  
住宅ローンを加算した、月の支払総額 10万円 8万円+2万円

具体例2

  • 住宅ローン以外の借入金:1,000万円
  • 住宅ローン残高:3,000万円、不動産評価額:2,800万円
  • ローンの毎月の支払額:10万円
  • 預貯金合計:200万円
  • 退職金債権:800万円
項目 金額等 備考 
住宅ローン以外の債務総額 1,000万円  借入金総額
圧縮後の金額 200万円 80%圧縮 
清算価値 300万円 預貯金+退職金8分の1
住宅ローン以外の支払予定債務額 300万円 200万円と300万円の高い方
5年分割の場合の支払予定額 5万円 60回払い
実際の債務圧縮率 70%  
住宅ローンを加算した、月の支払総額 15万円 10万円+5万円

清算価値保障原則と手続選択

清算価値保障原則の重要性

 清算価値が高くなってしまうと、再生手続による債務圧縮のメリットを受けにくくなります。高額な分割弁済が実際には困難ということであれば、再生手続を取ること自体が困難になることもあります。

 すなわち、住宅資金特別条項付個人再生を進めるにあたって、清算価値保障原則の検討は、極めて重要ということになります

清算価値保障原則により再生手続が破たんすることは少ない

 清算価値保障原則は、手続選択のために重要な指標であることは、間違いありません。ただし、一般論として、清算価値保障原則が大きな問題となることは、珍しいものです。清算価値がやや高額になったとしても、一定割合の債務圧縮によりメリットを受けられるためです。

 上記の「具体例2」のとおり、圧縮率が80%→70%となってしまうことはあります。とはいえ、債務を70%も圧縮できるという手続は、自己破産を除くと、他には考えられません。そして、当然のことながら、自己破産手続の場合には、自宅を手放す必要があります

 以上より、多少清算価値が高くなってしまったとしても、住宅を守りながら生活再建をしたいという場合には、住宅資金特別条項付個人再生は、心強い手続となる可能性が高いといえます

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

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住宅資金特別条項付個人再生の説明