遺言書がない場合の『遺産相続の流れ』を弁護士が解説

遺言書がない場合の『遺産相続の流れ』を弁護士が解説

遺産相続とは?財産分与と違う?

 遺産相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産を、相続人が引き継ぐことをいいます。ちなみに、「財産分与」は離婚の際に夫婦の財産を分ける手続のことで、「相続」とは異なります。

 ここでは遺言書がない場合の遺産相続について、弁護士が解説します。

遺言書を残さない人の割合

 相続が発生した事案のうち、遺言書を残さない方の割合は、9割程度とされています。要するに、自分の死後のことを考えて遺言書を残している人は、非常に少ないというのが実情です。

遺言書がない場合の遺産相続

 相続が発生した場合で、遺言書がないとなると、民法の原則どおりに相続が進むことになります。以下のように、法定相続人が、法定相続分の遺産を相続することになります。

相続人の範囲や法定相続分は、民法で次のとおり定められています。

相続人の範囲
 死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

 なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。

 また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

<第1順位>

死亡した人の子供

 その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

<第2順位>

死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

 父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。

第2順位の人は、第1順位の人がいないときに相続人になります。

<第3順位>

死亡した人の兄弟姉妹

 その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。

第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないときに相続人になります。

「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」(国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm)

 この民法で定められる相続順位及び相続分について、図と表で簡単に説明すると以下となります。

 まず、被相続人の配偶者は、常に相続人となります。配偶者以外の人は、(第1順位)子、(第2順位)父母、(第3順位)兄弟姉妹の順で、配偶者と一緒に相続人になります。

 たとえば、配偶者と子どもがいる場合、配偶者が50%、子どもが50%を相続します。子どもが複数いる場合はその50%を均等に分けます。たとえば2人の子どもがいる場合は、それぞれの子が25%ずつ相続します。

 ポイントとなるのは、第1順位の人がいないときのみ、第2順位が相続人になる点です。第1順位の人がいる場合は、第2順位の人は相続人になりません。第3順位の人も同様に、第1順位の人と第2順位の人がいないときにのみ相続人になります。

 配偶者がいない場合は、該当順位(最も上位の順位)の方が100%相続します。

 ちなみに、遺言書がある場合は、その遺言書のとおり、遺産が分割されることになります。ただし、被相続人の配偶者、子ども及び親には、遺言書でも奪えない『遺留分』があります。よって、遺留分の取得を希望する人は、遺言書の内容はどうあれ、この遺留分の侵害分を請求していくことが可能です。遺留分に関しては、非常に多くの論点が別途あるため、ここでは割愛します。

 なお、遺言書がある場合でも、相続人全員で合意できれば、遺言書と異なる遺産分割方法を取り決めることは可能です。

遺言書がない場合の遺産相続の流れ

 遺言書がない場合の遺産相続は、以下の流れになります。

相続人の確定

 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、相続人を確定します。これまで把握されていなかった婚外子が出てくるという場合がまれにありますので、注意が必要です。

遺産の調査

 具体的な遺産の調査を行います。預貯金、不動産、株式など、被相続人の財産と借金などの負債を把握します。遺産が多岐にわたる場合には、金融機関、保険会社及び証券会社への調査、不動産登記簿の取得、自治体への名寄帳の申請など、いろいろな手続が必要になることがあります。

遺産分割協議書の作成

 相続人全員で遺産分割協議を行い、具体的な相続の分け方を決めます。内容が決まったら、遺産分割協議書を作成し、遺産の名義変更手続や、解約手続を行います。

現金・預貯金のみのケース

 遺産が現金や預貯金だけであり、これを相続分で分けることに合意できたという場合は、遺産相続は比較的シンプルに済むことが多いです。例えば、預金を取得する人がこれを解約し、法定相続分に応じて金額を計算し、各相続人の口座に取得分を振り込むといった対応だけで、シンプルに手続が完了するためです。

 この手続の場合には、原則としては、以下の資料が必要となります。

  • 通帳
  • 戸籍関係資料
  • 相続人全員の実印・印鑑証明書
  • 遺産分割協議書

不動産が含まれるケース

 不動産が含まれる場合、相続は複雑になる傾向があります。

 不動産は、現金のように簡単に分けることができません。また、線を引いて土地を分筆するにも、費用と労力がかかります。不動産の形状や立地にもよりますが、分筆によって不動産の価値が下がることもあります。さらに、土地に建物が建っていれば、現実的に土地を分けられないということもありえます。

 そのため「誰がどの不動産を取得するか」を決めなければならず、その際に不平等が生じやすいといえます。そうすると、法定相続分を加味しながら、現実的かつ相続人が納得できる遺産の分け方を協議する必要があります。

 不動産の分け方には、例えば以下のような方法があります。

  • 相続人の一人が不動産を取得し、その人が他の相続人に代償金(不動産を金銭換算し、相続分に従い取り分を決めたもの)を支払う
  • 不動産を売却して、取得できた現金を相続分で分ける(換価分割)
  • 法定相続分のとおり、不動産を共有状態にする(共有状態は法的に不安定であるため、一般論としては望ましくありません)

「分け方に納得できない」「一方的だ」など話し合いで解決できない場合

 遺産分割手続には、どうしてもお金が絡みます。このため、相続人間で話し合いがまとまらないこともよくあります。どうしても合意できないという場合には、家庭裁判所の遺産分割調停でなければ、協議が進まないということもあります。

 遺産分割調停となった場合には、裁判官及び調停委員が間に入って、遺産の分け方について協議します。そこでも合意に至らないという場合は、相続人や遺産が確定されているなどといった条件が整っていれば、「審判」という方式で、裁判所に具体的な遺産分割方法を決めてもらうこともあります。

 そして、審判結果に不服がある当事者がいる場合には、異議申し立て(即時抗告)を経て、高等裁判所での手続が継続することになります。

 なお、審判を行うための前提条件が整っていない場合には、この条件を整備するため、家庭裁判所ではなく、地方裁判所の手続が改めて必要なこともあります。このあたりの制度設計は、率直にかなり複雑で、弁護士でも見通しを誤ることがあります。

弁護士に依頼するメリット

 遺産相続は、全員が納得し、不公平や不和が生じずに終了できることが理想的です。とはいえ、不動産が絡む事案や、特定の相続人に多額の生前贈与があるなどといった場合、専門的な判断が求められます。

 また、いわゆる典型的な争点がない相続の場合でも、専門職が関与のうえ、公平といえる相続方法の取り決めを望むご家族もあります。

 さまざまな事情で相続人間の話し合いで合意できない場合に、遺産分割調停などの裁判所の手続を利用するしないにかかわらず、専門職である弁護士に依頼することで、余計な苦労や争いをせずに解決できることがあります。弁護士は、法的な知識やこれまでの裁判例を基に、現実的で妥当な解決策を提案します。感情的な対立が激化してしまった場合でも、当人同士ではなく、弁護士が間に入ることで、協議が冷静に進むことが、多くあります。

 以上、『遺言書がない場合の遺産相続の流れ』を弁護士が解説しました。以下も合わせてご参照ください。

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