刑事事件の事例紹介(住居侵入窃盗で逮捕・勾留された事案)

解決までの流れ

はじめに

 本サイト中の事例紹介のページに、一定程度アクセスがあります。ただし、現在の紹介ページのスタイルだと、事例の追加や編集がやや難しいのが実情です。このため、事例紹介をブログ形式にして、随時追加していく方法に移行したいと考えております。どうかよろしくお願いいたします。

 今回は、刑事事件の事例紹介です。住居侵入窃盗の罪で逮捕・勾留されたものです。事例紹介ページの事案と同様のものです。

事案の概要

 依頼者(以下では刑事手続の呼び名に従い、「被疑者」「被告人」などとします)は、工場に侵入し、銅線や鉄くずを盗んだことで、警察に捕まりました。被疑者は24歳で、実家を出て一人暮らしをしながら、アルバイトや日雇い労働で生計を立てていました。しかし、生活費や遊興費欲しさに窃盗を幾度か行っているうち、犯行の一つが発覚して逮捕されました。

 逮捕から2日後、「罪証隠滅及び逃亡のおそれあり」ということで、被疑者は勾留されました。

国選弁護人の就任

 被疑者は勾留される際に、国選で弁護人を依頼するかどうかを聞かれました。被疑者には手持ち資金がなかったため、私選ではなく、国選弁護人に頼むこととしました。

 勾留から2日後、国選弁護人に選任された弁護士(以下では「弁護人」とします)が接見のために、被疑者が留置されている警察署に来ました。接見で弁護人が依頼者に伝えたことは、以下のような内容でした。

  1. 黙秘権があるので、取調べで言いたくないことは言わなくてよい、嘘をつくくらいなら黙秘したほうがよい
  2. 勾留は10日間だが、1回延長が可能で、さらに10日間身柄拘束が継続することがある
  3. 本件では勾留延長となる可能性が非常に高い
  4. 勾留期間が満了するまでに、検察が起訴するかどうかを決める
  5. 起訴になった場合には、さらに2か月の身柄拘束が認められることになる(起訴後勾留)
  6. 起訴後の勾留は更新される、保釈請求が認められない場合は、裁判の終了まで身柄拘束されるものと考えて欲しい

起訴までの流れ

取り調べ

 被疑者は犯行に関して特に争う内容はなかったため、取調べには協力的に応じました。

 ただし、担当警察官が取調べの中で、被疑者に関わりのない類似の犯行について聞いてきたことがありました。被疑者は身に覚えがなかったため、警察には「自分は知らない、関係ない」と答えました。担当警察官は不服そうな表情を見せたようでもありましたが、結局、それ以上追求されることはありませんでした。

接見の状況

 弁護人は、3日に1回程度のペースで面会に行き、必要な助言を行っていました。

 被疑者は、弁護人経由で交際相手に連絡を取ってもらい、交際相手とも面会していました。交際相手には衣服を差し入れてもらったり、アルバイト関係者への事情説明をお願いしていました。

起訴

 勾留から10日後、勾留延長が決定されました。その後も、取調べや引き当たり捜査は続きました。

 勾留延長から7日後には検察官の取調べが行われ、取調べは終了となったようでした。勾留の満期日に、建造物侵入・窃盗の公訴事実が記載された起訴状が、被疑者の下に届きました。同じころ、弁護人のところにも同様の起訴状が届きました。

 なお、裁判期日は、起訴日から1か月後に指定されていました。

裁判の終結までの流れ

被害者との示談

 弁護人が確認したところ、検察官より、「余罪について今回は起訴しない」との返答を得ました。

 また、示談を行うため、被害者と連絡が可能であるかどうかの確認を検察官に依頼しました。被害者への連絡に許可が出たため、弁護人はすぐに被害者と示談交渉を開始しました。

 被害者は、当初は示談に難色を示していました。しかし、最終的には被害品の時価額である10万円の支払いにより示談とすることを受け入れてくれました。弁護人は、事前に連絡していた依頼者の両親から示談金の援助を得て、被害者との示談を成立させました。

情状の立証

 裁判で弁護人は、示談成立の事実をまず主張しました。

 また、被告人の両親と協議し、被告人を実家に戻して安定した就職先を探させる方針を立てていました。被告人もこれに同意していたので、裁判では被告人の父親に情状証人として出廷してもらい、今後の監督を誓約してもらいました。

 被告人質問では、被告人自身が犯行への反省を述べ、きちんと就職して社会復帰を目指すと宣言しました。

 検察は懲役1年を求刑し、弁護人は執行猶予付き判決を希望して、裁判は結審しました。判決言渡日は、2週間後と決まりました。

判決

 判決は懲役1年、執行猶予3年と決まりました。判決文では、被告人の犯行の悪質性が問題視されていました。ただし、以下の点がが評価され、執行猶予が付されることとなりました。

  1. 示談が成立していること
  2. 父親の監督への期待
  3. 本人に反省がみられること

 判決の読み上げは5分ほどで終了しましたが、裁判官が最後に、「執行猶予期間中に再度懲役刑となると、今回の懲役刑も加算され、非常に長期間刑務所に行かなければならないが、そうならないように気をつけてください。」 と強く念押ししました。被告人には不服はなかったため、そのまま判決は確定しました。

費用の目安

  1. 国選弁護人の場合:被疑者・被告人には負担なし
  2. 私選弁護人の場合:着手金及び報酬金合計で約60万円