はじめに

面会交流とは

 未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、親権者を定めなければなりません。親権者ではない親が子どもに会うことを「面会交流」といいます。

 面会交流については、夫婦間の協議により具体的な方法などが決まれば望ましいところです。とはいえ、これが難しい場合には、家事調停を経て、家庭裁判所により決めてもらうこともできます。

面会交流をめぐる問題

 面会交流に関する取り決めがスムーズに決まらないことが、しばしばあります。離婚に至った夫婦間の感情のもつれであったり、親権争いをした結果、親権者が「面会交流を通じて、子どもを奪われるんじゃないか」などと危惧することもあるためです

 とはいえ、面会交流は、非監護親ではない親との交流により「子の健全育成に有益となる」ものと一般に理解されていて、子どもにとっても必要なものとされます。このため、非監護親からの求めがあれば、面会交流は原則として認められるべきものです。

 このような事情があり、例えば、「子どもを会わせたくない親」、「子どもに会うことを強く望む親」、「親権者の顔色を見る子ども」など、複合的な問題により、面会交流が破綻するケースがあります。よくあるのは、面会交流の方法を決めても親権者が従わない、といったものです。

紹介する裁判例について

 今回紹介する裁判例は、子どもの面会交流の方法につき、段階的な方法を認めたものです(判例タイムズ1434号131頁)。具体的には、最初のうちは2時間面会交流の時間をとり、次の段階では4時間の時間を取る、といったようなものです。子どもの負担などを考慮し、詳細に面会交流の方法を定めたものですが、あまり同じような事例は多くないように思われます。

 なお、決定書中の当事者の記載につき、適宜、「父親」などと変更しています。

事案の概要

当事者など 父親から、母親に監護されている子に面会を求めた
問題 面会交流の方法
家裁での審判内容 月1回、子と父親だけの6時間の面会を認めた
高裁での審理内容 面会交流の方法、家裁調査官による再度の調査実施の是非
裁判所の判断 面会交流につき、段階的な方法を認めた(3回目まで2時間、4~7回目まで4時間、それ以降は6時間、2回目では母親の立ち合いを認めた
裁判所の判断2 家裁調査官による再度の調査は不要とした
裁判所の判断3 母親の主張する、当面は3月に1回、2時間、母親立ち合いの方法で面会交流を行うとすることは、相当ではないとした
特記事項 父親と子は約7年間交流がなかったが、この距離間は、面会交流を継続する中で解消するべきことという判断が通底している

決定の要旨

面会交流の意義について(原審)

 非監護親の子に対する面会交流は,基本的には,子の健全育成に有益なものということができるから,これにより子の福祉を害するおそれがあるなど特段の事情がある場合を除き,原則として認められるべきものと解される。

面会交流の具体的方法を検討するうえでの検討事項

 未成年者らに相手方(父親)を拒否する明確な意思があるとは認められないが,相手方(父親)と未成年者らとの交流は長らく途絶えていたことから,未成年者Dには,相手方(父親)の記憶がなく未成年者Cの記憶も断片的なものであり,相手方(父親)も成長した未成年者らの性格等を把握できているとはいえず,本件試行的面会交流が双方共に緊張して十分に打ち解けないままに終わってしまい,未成年者らが面会交流に対して消極的な気持ちに転じてしまったことを考慮すると,最初から相手方(父親)と未成年者らとだけで長時間の面会交流を設定することは,未成年者らにとって精神的負担が大きく,かえって面会交流に対する消極的な気持ちを強くさせかねないことや,未成年者らに対する対応に不慣れな相手方(父親)にとっても課題が多いといえることから,最初は面会交流時間を比較的短時間に設定し,回数を重ねながら,段階的に面会交流時間を伸ばしていく方法を執るのが相当である。

面会交流の具体的方法

 面会交流の意義及び以上説示した点に加え,抗告人(母親)は面会交流について一定の理解を示しつつも,具体的な試行的面会交流の設定場面では結果的にこれを拒否することを繰り返したこと,相手方(父親)の未成年者らとの面会交流に対する希望,未成年者らの年齢,未成年者らの相手方(父親)との面会交流に対する心情,未成年者らの気持ちを気遣う抗告人(母親)の心情等本件に現れた一切の事情を考慮すると,面会交流は1か月に1回,第二土曜日とし,初回から3回目までは午前11時から午後1時,4回目から7回目までは午前11時から午後3時,8回目以降は午前11時から午後5時までとし,未成年者らが相手方(父親)との面会交流に消極的な気持ちを有しており,実施当初に不安を覚えることも予想されることに鑑みて,初回及び2回目までは抗告人(母親)の立会いを許し,引渡場所は抗告人(母親)宅の最寄り駅であるE駅改札付近において,開始時刻に抗告人(母親)が相手方(父親)に未成年者らを引き渡し,終了時刻に相手方(父親)が,同所において抗告人(母親)に引き渡す方法によることとするのが相当である。

母親の立ち合いの意義について

 抗告人(母親)の立会い(同席)については,面会交流実施の導入段階というべき最初の数回は,上記のような気持ちを抱いている未成年者らを安心させるために抗告人(母親)の立会いを認めるのが相当であるが,抗告人(母親)が立ち会うことによって未成年者らが抗告人(母親)に対する気遣いをすることを強いられ,相手方(父親)との自由な面会交流を阻害する要因になりかねないという側面があることを考慮すると,継続的に抗告人(母親)の立会いを伴う面会交流を行うことは相当とはいえず,【中略】初回及び2回目までの面会交流に限って抗告人(母親)の立会いを許すのが相当である。

決定に対するコメント

面会交流の方法について

 裁判所の判断からは、「面会交流は認めるべき」という一貫した姿勢がうかがえます。その上で、約7年間交流がなく、すぐに長時間の面会は不適当とも解される父子につき、どのような方法が望ましいかを探求しています

 最初から6時間もの長時間の面会交流を認めるとなると、子どもも疲れてしまい、結果として「子どもが嫌がっているから面会しない」という母親の態度の硬化を招く可能性もあります。そのような可能性を避けるべく、最初の2回は母親の立ち合いも認めるなどして、何とかバランスを取っているように解されます。

面会交流の頻度について

 母親側は、東京高裁に抗告して主張を展開する中で、当面は3か月に1回、2時間、母親立ち合いという方法によるべきという対案を提示していたようです。とはいえ、この提示については、「家裁が最初に決めた枠組み(月1回実施)を変更すべき事情はない」という判断の仕方で、採用していません。面会交流の頻度としては、3月に1回では空白期間が大きすぎるという評価があるものと解されます。

 通常の離婚調停などの運用でも、月1回程度とする事案が多数であるように思われるところです。

本決定の意義

 家事事件では、柔軟な対応が求められることがあります。本決定は、実際の父子関係に照らして、かなり柔軟な判断をしたものと解されます。家事事件は同種事案というものが想定しにくく、このような段階的な面会交流の方法が、どの程度一般化されるものかは、評価が難しいところです。

 とはいえ、「親子関係が疎遠だったから、そもそも面会交流はすべきではない」などという反論が監護親から出た時に、「面会交流によってこそ親子関係の距離感を解消すべきだ」という姿勢に貫かれた本決定は、参照されるべき点が多いように解されます。

補足

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離婚

離婚等に関する裁判例

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