破産と職業制限

破産することによる不利益

 自己破産手続を取ると、「官報」という国が発行する冊子に名前が載ります。ここに、破産した者の名前と住所が記載されます

 このような情報公開は、破産手続が公的機関による債務整理方法である以上、やむを得ないことといえます。この情報開示を嫌がり、離婚手続による改姓や住民票の移転を挟むなどすると、最悪の場合は、免責不許可となるリスクもありますので、注意が必要です。

判例紹介・同時廃止の破産事件につき、財産秘匿などの事情より、即時抗告により免責不許可とされた事案(千葉地裁八日市場支部H29.4.20決定)

 この他、破産手続を取ると、職業制限が生じます

典型的な職業制限

 破産手続を取ったことによる具体的な職業制限の内容は、各種法律に定められています。

 この中で典型的なものは、以下のとおりです。

業種 根拠法 備考
生命保険募集人 保険業法279条1号など いわゆる「生保レディ」など
警備員 警備業法3条1号 いわゆる「ガードマン」など
取締役 民法653条2号 委任契約の終了事由
後見人 民法847条3号  –
弁護士など各種士業 それぞれの業法  –

職業制限がかかる期間

「破産してから復権を得るまで」の職業制限

 破産した場合の職業制限は、永遠に続くものではありません。実際には、破産手続が開始して職業制限を受けたとしても、「復権」を得ることで制限は解除されます

「復権」とは何か

 復権とは、破産手続により生じた公的・私的な資格制限を消滅させるものです。復権により、破産者は、破産手続開始前の法的地位を回復することができます

 復権には、条件を満たすことで復権する「当然復権」と、破産者が申し立てが必要な「申立てによる復権」の2種類があります。ただし、ほとんどの事案は「当然復権」(破産法255条)が問題になるものです。

 実際には、「免責許可決定が確定すれば、復権する」と考えておけば、ほとんどの事案は補足できます(破産法255条1項1号)。「申立による復権」は、免責許可決定が得られなかった事案で問題になるものと考えておけばよいでしょう。

破産法255条(復権)

1項 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。

  1. 免責許可の決定が確定したとき。
  2. 第218条第1項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
  3. 再生計画認可の決定が確定したとき。
  4. 破産者が、破産手続開始の決定後、第265条の罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。

2項 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。

3項 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第1項第1号又は第3号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。

免責許可決定の重要性

 免責許可決定を得ることで、支払不能になった債務の支払い責任を免れることができます。それ以外にも、職業制限の解除を受けることもできます。

 このため、個人の破産事件で、最終的に免責を受けることは、非常に重要な意味を持ちます。破産法では原則として免責が許可されるものの、免責不許可事由に該当してしまうと免責が受けられないことがあります。そのようなおそれがあるケースでは、慎重に手続を進める必要があります。

破産手続で免責が許可されない場合(免責不許可事由)の説明

その他の破産による権利制限

ブラックリストの扱い

 破産手続を取ると、いわゆるブラックリスト入りすることになります。「信用情報にキズが付いた状態」となり、破産手続終了後のクレジットカードの作成や、キャッシングに制約がかかります

 このため、住宅ローンを借り入れることも、難しいことが想定されます

 この信用情報についての扱いは、借り入れの申し込みなどがあった場合の、その都度の業者の判断ということになります。当然のことですが、この業者には、民間業者も多く含まれます。よって、業者によっては破産手続終結後から7年後にはクレジットカードが作れることもあります。

 とはいえ、実際には、破産手続終結後から10年程度の時間が経過しなければ、カードを作ったり、ローンを借りたりということは難しいことが多いといえます。

破産による権利制限についての誤解

破産しても選挙権はなくならない

 破産しても、選挙権はなくなりません。

戸籍には載らない

 破産しても、戸籍にそのような情報が記録されることはありません。禁治産者制度のころからは、運用は変わっています。

生活保護などの社会給付は受けられる

 破産しても、生活保護などの社会給付を受けることは可能です。むしろ、破産する前に生活保護を受給しようとすると、先に破産手続を済ませるように誘導されることもあるでしょう。最低限度の生活費補償である生活保護費で、私的に作った借金を返すことは認められないためです。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

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自己破産手続の説明