人身傷害保険とはどのようなものか

人身傷害保険は、自分のための自動車保険

人身傷害保険の概要

 人身傷害保険とは、要するに、自分のための自動車保険です。

 通常、自動車保険は、事故を起こしてしまった場合に、被害者に賠償するための保険です。他方、人身傷害保険では、事故に遭った場合に、自分の保険から補償を受けられることになります。

人身傷害保険の普及状況

 現在では、人身傷害保険は、多くの自動車保険に標準の特約として付帯されています。非常に有用な保険であるため、未加入の場合には、すぐにでも追加することをおすすめします

 なお、自分が加害者となってしまった場合の、被害者に対する「対人・対物賠償」は無制限なことが多い一方で、人身傷害保険は多くの場合に支払限度額があります。保険料が高額になってしまうデメリットはありますが、できるだけ限度額を高く設定しておくべきといえます。

人身傷害保険の強み

加害者の性質によらず補償を確保できる

 交通事故の場合、加害者を選ぶことができません。これは、加害者が加入している保険会社を選ぶこともできない、ということでもあります。交渉していたら、保険会社担当者との相性が悪かったということもあります。

 また、最悪のケースでは、加害者が任意保険や自賠責保険に加入していないという場合もあります。

 このようなひどい状況でも、自分で人身傷害保険に加入しておけば、相当程度の補償を確保することができます

過失割合がある事故の場合に心強い

 人身傷害保険では、保険会社が用意している「人身傷害保険の基準」により算定された金額を支払ってもらうことになります。そして、人身傷害保険が適用される場合には、その支払い金額は過失相殺をしないという、非常に重要な特徴があります。

 人身傷害保険の基準による支払いであるため、裁判所基準よりは低額な補償となることが通常です。とはいえ、自分に過失があっても、計算されたとおりの補償を得られるため、心強いものです。

具体例

 交差点内の事故で、被害者に3割の過失があるケースを考えます。人身傷害保険の基準で総損害額が100万円と算定された場合、3割の過失相殺を受けた70万円しか保険金を得られないようにも思われます。しかし、人身傷害保険は過失相殺をしないため、基準のとおり100万円の支払いを受けられることとなります。

当面の治療費支払いを受けられる

 被害者にも過失が一定程度認められる場合には、加害者側の保険会社が被害者の治療費を支払ってくれないことがあります(一括対応を拒否される場合)。この場合、健康保険を使用したとしても、ケガの治療のためにある程度の費用を負担しなければなりません。治療がいつ終わるかは不透明なことも多く、精神的にも負担となることがあります。

 このような場合には、人身傷害保険を利用して、治療費の支払いを受けることも可能です。ただし、限度額の都合などもありますので、自分の保険会社の担当者とよく話し合いをすることが重要です。

一括払とは何か、なぜ加害者の保険会社が治療費を支払うのか

交通事故の治療費の支払いに、人身傷害保険を利用する方法

人身傷害保険の補償範囲

被保険者の事故でなくても補償される

 人身傷害保険の補償範囲には広がりがあります。例えば、保険加入している車両で事故に巻き込まれたという場合には、搭乗者すべてが補償の対象となることが多いものです。保険商品や契約により異なりますが、広く事故当事者を補償しうる、心強い保険です。

自動車同士の事故以外でも補償の範囲内になりうる

 人身傷害保険は、自分で補償範囲を広げることもできます。例えば、特約で、以下のような場合まで補償の範囲に含ませることも可能です。

  1. 契約車両以外の車両を運転していたとき、同乗していたときの交通事故被害も補償する(「自動車事故特約」などと呼ばれます)
  2. 歩行中に交通事故に巻き込まれた場合も補償する(「交通事故特約」などと呼ばれます)

 このように、典型的な自動車同士の事故でなくとも、補償を受けられる可能性がある保険です。交通事故の被害に巻き込まれた場合には、保険証券を確認することが重要です。また、補償範囲については、普段から自分の保険の担当者によく確認しておくべきといえます。上手に設計することで、事故に遭ってしまった場合の心強い備えとなるためです。

加害者の賠償との関係

賠償額の限度は変わらない

 人身傷害保険から補償を受けた場合は、加害者から受けられる補償額は減少することになります。法的には、保険会社が賠償相当額を支払ったことで、その金額分、加害者に対する請求権を取得したという扱いになります(保険金支払による請求権代位)。

 一つの事故により発生する損害の総額は変わらないため、賠償の二重取りはできないことになります。

過失がある場合の補償関係

 自分にも過失がある事故の場合は、理屈上は、人身傷害保険はまずは過失分の支払いに充てられます。このため、加害者からも賠償金を取得することで、過失があるにも関わらず、賠償額を全額取得できることもあります。ただし、この補償関係は単純に計算できるものではありません。過失のある事故で人身傷害保険が絡む場合には、弁護士の助言を受けるべきです。

まとめ

  1. 人身傷害保険は、交通事故の補償を自分の保険から受けられる、優秀な保険
  2. 人身傷害保険は、自分にも過失がある事故の場合に心強い味方となる
  3. 人身傷害保険の適用範囲は広い
  4. 人身傷害保険と加害者の賠償の関係は算定が難しいため、弁護士の助言を受けるべき

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

交通事故と自分の保険

この記事を書いた人

斉藤圭
斉藤圭弁護士・舞鶴法律事務所(山梨県甲府市)
地元山梨で舞鶴法律事務所を営んでいます。
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