交通事故の「積極損害」についての説明

積極損害の内訳(人身損害)

 交通事故の「積極損害」とは、「交通事故により発生した損害」という意味になります。

 ケガによる人身損害について、この積極損害として認められる主な内容は、以下のとおりです。どの損害項目も、支払いを受けるためには、交通事故と損害発生の間に、相当因果関係が認められることが必要です。

  1. 治療費
  2. 付添看護費
  3. 入院雑費
  4. 交通費
  5. 葬儀関係費
  6. その他

積極損害(人身損害)の各項目の説明

治療費

 原則として実費全額が認められます。ただし、鍼灸、マッサージ費用などは、医師の指示があるなど、必要性と相当性が認められることが必要です。

付添看護費

 看護師などの職業付添人の場合、実費全額が認められます。近親者の場合でこれが必要なときは、一日単位などで相当額を算定し、これが認められます。

入院雑費

 一日単位で相当額を算定し、これが認められます。

交通費

 1キロあたりのガソリン費を算定し、これが認められます。タクシー代は、そのような交通手段が必要な場合に認められます。

葬儀関係費用

 被害者が死亡した場合に、一般的に必要相当な金額ということで、一定の限度額の範囲内で認められます。お布施代などの証明が難しい内容も多く、支払い総額が認められないこともあります。

その他

 交通事故による怪我で家屋の改造が必要なった場合や、義肢の費用なども、必要かつ相当な範囲で認められます。やや例外的な損害項目であり、見積りなどの資料を集めることが求めらるのが一般的です。

人身損害の取り扱い

 人身損害は、ケガの治療が終了しないと、なかなか全容が分からないものです。このため、最終的な金額の合意までには時間がかかることも多いものです。

積極損害(物件損害)

 車両の損傷などの物件損害の場合、積極損害として認められる典型的なものは、以下のとおりです。

  1. 修理費用
  2. 代車費用(レンタカー代)
  3. 評価損(格落ち)
  4. その他

積極損害(物件損害)の各項目の説明

修理費用

 交通事故で壊れた車両を修理するための費用です。修理工場の見積もりにより算定されます。加害者の保険会社も修理内容をチェックするなど関与をして、事故前にあった傷の修理や不必要な塗装作業等が入り込まないようにします(これを「協定」といいます)。

 ただし、修理費用が車両の時価額を超える場合には、車両の時価額が賠償額の限度となります。この扱いは、「経済的全損」または単純に「全損」と呼ばれます。経済的全損は、いろいろな争いのもとになることもあります。

代車費用(レンタカー代)

 車両を修理するための期間、代車(レンタカー)を借りることがあります。この費用についても、物件損害として認められます。ただし、あまり長期間代車を利用していると、一定期間以上の費用は、損害とは認められないケースもあります。これは相当因果関係の問題となります。

評価損(格落ち)

 例えば中古車市場では、事故車は無事故車と比較して、安い評価を受けます。このような損害を「評価損(格落ち)」といいます。

 年式の新しい車両が交通事故の被害に遭い、軸部分に損傷がある場合などには、格落ちに関する賠償が認められることがあります。ただし、この基準は比較的厳しいものです。このため、修理額の大きくない単純な追突事案だと、格落ちの賠償が認められないことも多いです。

その他

 カーナビなど、車両積載物が損傷した場合には、その賠償も行われます。ペットが怪我をした場合も、扱いとしては「物件損害」となります(法律上、ペットは「物」のためです)。

物件損害の取り扱い

 物件損害は、慰謝料などを含む人身損害に比較すると、算定のしやすいものです。このため、事故の後、まずは物件損害の交渉から開始することが通常です。ただし、過失割合の争いが大きい場合や、休車損などの消極損害も問題になる場合には、解決までに時間がかかることもあります。

おわりに

 上記の項目以外にも、いろいろな損害が発生しえます。一般論としては、交通事故と損害発生に相当因果関係があれば、認められる筋合いのものとなります。

 ただし、加害者の保険会社と話をするうえでは、根拠資料が求められることが通常です。そのような判断過程に乗らない損害となると、請求するには困難も予想されます。このあたりは、専門的な解釈も必要なケースがあります。疑問がある方は、弁護士に相談することを検討するべきです。

補足

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交通事故

交通事故の損害賠償の考え方