交通事故に巻き込まれたら、まずは整形外科に行くこと

事故後、早期に整形外科を受診すること

交通事故では思いがけない怪我をすることがある

 交通事故に巻き込まれた場合、怪我をすることも多くあります。そのようなときには、まずは整形外科を受診し、診察を受けることが重要です。自覚症状が軽いという場合でも、最低でも一度は整形外科を受診しておいたほうが無難です。

 これは、交通事故の場合、事故の後しばらくしてから症状が出てくることもあるためです。交通事故では、頚椎などに日常生活では想定されない衝撃が加わります。事故直後は何ともなかったが、数日したら痛みが出てきたということもあります。また、事故直後はぶつけたところが痛かったが、少ししたら手にしびれが出てきた、などということもあります。そのような事態に備えて、事故後早い段階で医師の所見を確認し、発生する可能性のある症状などを把握しておくことが重要です

通院を我慢することは禁物

 病院では、待ち時間が長かったり、受診時間も短く夜間対応もしていないため、平日の仕事の時間帯に行きにくいことが多いといえます。このような事情もあり、通院を敬遠する方もいます。とはいえ、交通事故で怪我をした場合、痛みを我慢して通院せずにいると、あまりよくない結果を招きます。

 まず、通院をしなければ、相手方の保険会社に「怪我は治癒した」と評価されることがあります。痛みは外からは見えず、通院という客観的な事実がないとなれば、そのような判断もやむを得ないとも言えます。

 また、通院をしなければ、医師の所見を確認することもできません。医学的な見地から治療が実際に必要かどうかを判断することができません。結果として、適切な時期に適切な治療が受けられないリスクも高まります。

 このような事情が重なると、損害賠償額の算定をするうえでも不利に働きます。賠償額の算定基準では、通院期間と賠償額は密接に関わっています。ここで、通院の事実がないとなれば、賠償額を増額させる根拠がなくなってしまいます。

 結局、交通事故の直後は、特に違和感がある場合には、ある程度の頻度で通院することが非常に重要となります。適切な治療を実現するという観点からも、適切な賠償を実現するという観点からも、このことは当てはまります。

弁護士が介入した場合の賠償額を概算するため、「損害賠償額自動計算機」を作成しました(別ウィンドウが開きます)(通院日数が賠償額の基準となっていることがわかります)。

早めにMRIを撮影しておく

MRIには神経が映る

 MRIという機械があります。レントゲンには骨しか映りません。他方、MRIには、神経が映ります。重いむちうちの場合には、ヘルニアがはっきり映ることもしばしばあります。非常に優れた医療機器で、性能のよいもので事故直後に撮影すると、炎症個所までわかることがあります。

 後遺障害まで視野に入れた場合、このMRIを早期に撮影しておくことが、極めて重要となります。MRIにより神経の圧迫状況がわかれば、その事情が、後遺障害の認定につながる極めて重要な根拠となるためです。

 受傷直後のMRIも、症状を知る上では確保しておくべき医学的証拠となります。事故後はいろいろと負担感があろうかとは思われますが、時間を作ってMRI撮影をしておくべきと考えます。MRIに関する説明は、以下のリンク先のページをご参照ください。

交通事故で受傷後に症状が続く場合には、早期にMRI撮影をしておくこと

保険会社との協議が重要

事故受付を早期に済ませておく

 交通事故の当事者となった場合には、保険会社に連絡して事故受付をしてもらう必要があります。「事故から60日以内に連絡がない場合には、保険金を支払わない」と保険の約款に書いてあるケースもあります。このため、特に加害者側の保険会社には、早急に連絡をするべきです

 この連絡は加害者側で行うことが筋です。とはいえ、加害者が動かない場合には、被害者側で保険会社の情報を確認して、主導して連絡することも検討すべきです。事故後に加害者側の保険会社の名前などを聞いておけば、対応しやすいと思われます。

同意書などの作成

 交通事故の被害者の立場で医療機関に通院するときには、多くの場合は相手方保険会社が治療費を支払います。このため、被害者が医療機関の窓口で治療費を支払うことは、通常はありません。

 ただし、この手続に際しては、相手方保険会社に「同意書」の作成を求められます。この同意書は、治療費を支払っている保険会社が、治療状況の資料などを取得することに同意する趣旨のものです。この書面は、治療費の支払いを相手方保険会社から受ける以上、作成しなければならない性質のものです。

 MRIの撮影についても、特に他の医療機関を利用する場合には、相手方保険会社に事前の調整をしてもらう必要があります。これが不十分だと、窓口で費用支払いを求められたリ、MRIの撮影自体ができないこともあります。

 結局、相手方保険会社とは、ある程度の協議をする必要があります。円満に協議できればよいのですが、加害者が加入している保険会社といった性質上、心情的にもそのようなことが難しいこともあります。

窓口としての代理人弁護士

 いろいろな理由で、保険会社との交渉をしたくないということがあります。そのような場合には、代理人弁護士を依頼するべきです。「相手方保険会社と話をしたくないから、交渉をしない」とか、「相手方保険会社と話をしたくないから、もう病院にも行かない」といった対応は、適正な賠償を確保するという観点からは、まったくおすすめできないものです。

 そのような気持ちがあろうとも、「相手方保険会社とは一定の協議は必要」と割り切ってもらうことが重要です。そして、負担を軽減するための方策として、代理人弁護士の依頼ということを検討してもらいたいと考えます。

 その際の弁護士費用の支払いについては、弁護士費用特約が便利です。ご自身の自動車保険に弁護士費用特約がある場合には、むちうち症のケースでは、相談費用やその後の弁護士費用についても、ほぼ全額が保険金で支払われるためです。

より詳しい説明は、「弁護士費用特約はどのようなものか」をご覧ください。

まとめ

 今回のまとめは、以下のとおりです。

  1. 交通事故に遭ったら、早期に整形外科に行く
  2. 事故後、早期にMRIを撮影しておく
  3. MRI撮影の際には、相手方保険会社としっかりと調整する
  4. 保険会社との交渉を希望しない場合には、弁護士を有効利用する

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

交通事故直後の対応