事故現場で示談書や念書の作成をしてはいけない

交通事故直後に示談してはいけない

示談の話があった場合の対応

 交通事故の直後、警察がいないところなどで、当事者同士で示談の話になるというケースがあります。事故を早く終わらせたい加害者がリードすることもあります。また、とりあえずお金が欲しい被害者がリードすることもあります。ときには、強い調子で示談を求めてくる人もいます。

 そのようなときは、代理店や保険会社、弁護士などに電話等で確認を取りましょう。聞かれた側は間違いなく、「そのような交渉に応じてはいけない」と言うでしょう。それが正解であり、いったん落ち着いて、警察の到着なりを待ってください。

 結局、一般論として、事故直後に損害賠償の交渉をしてはいけないのです

保険会社が支払うのは、法的に支払義務がある金額のみ

 多くの方は、自動車保険の対人賠償及び対物賠償は、「無制限」の条件で加入しているかと思われます。このため、即決示談を求められた場合でも、「保険会社から無制限の賠償が受けられるから、ここで示談しても問題ない」などと考えてしまうかもしれません。

 しかし、そのような考え方は、間違いです。確かに、「無制限」の条件で自動車保険に加入していれば、自分が賠償義務を負った場合には、保険会社は上限なく損害賠償に応じます。しかし、そのためには、「法的に認められた賠償義務」という条件が満たされる必要があります。

 損害賠償額の決まり方には、基準があります。人間の受けた損害を金銭評価するのは、困難な作業です。とはいえ、これまでの膨大な事例の集積から、一定程度類型化された損害額の決め方が確立しています。この賠償額の算定方法により、人身の損害額が例えば100万円と確定した場合に、対人無制限の保険に加入していれば、保険会社は100万円の支払いに応じます。

 しかし、この基準から外れた形式で示談をしてしまうと、保険会社からの支払いは受けられなくなります。

 例えば、事故現場で保険会社の承諾もなく、「すべての損害の賠償に応じる」などと示談した場合を考えます。このとき、損害自体が100万円だったとしても、保険会社が「被害者にも20%の過失がある」と考えた場合には、保険会社は100万円の80%である80万円の支払い以上には応じません。保険から支払われない20万円は、示談の内容によれば、加害者自身が負担することになります。これでは、せっかく自動車保険に入っていても、ほとんど意味がありません。

 このように、保険会社が間に入らない示談は、極めて危険な結果をもたらすことになります。

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一度した示談を取り消すのは容易ではない

一度成立した契約の取り消しは困難

 交通事故現場で示談をして、示談書に署名押印をしてしまった場合は、それを取り消すことは容易ではありません。「気が動転していた」などの主張しても、事故の相手方は認めないでしょう。また、裁判にもつれた場合でも、裁判所が簡単に無効としてくれるとは思われません。

 自分の意志で応じた契約で、書面が残っているとなると、基本的には有効な契約と解釈されると考えるべきです。

事故直後は、示談交渉をする時ではない

 交通事故による損害賠償の金額は、すぐにわかるものではありません。車両の修理費などの物件損害は、しっかりと修理工場で見積を取らなければ金額がわかりません。また、人身損害となると、治療が終わらない状況では、損害がいくらになるかは不明確です。

 交通事故による損害賠償の全体がわかるまでには、相当の時間が必要です。例えば人身損害は、通院期間が数か月あるとなれば、その間は損害額がわかりません。治療終了となっても、後遺障害の診断を受けるとなれば、そこから2,3か月程度の時間は必要です。そして、損害額が確定しない以上、保険会社も支払いに応じることはできません。

 結局、交通事故の賠償問題が解決されるまでには、ある程度の手間と時間がかかるということです。この前提を踏まえずに、事故現場ですべて終わらせようと考えてしまうと、思わぬ不利益を受けることがあります。これは、加害者側のみならず。被害者側でも同じことです。低すぎる金額で即決示談して、後で後悔しても遅いといわねばなりません

 やはり、事故直後は、示談交渉をするべき時ではない、ということです。

まとめ

 今回のまとめは、以下の通りです。

  1. 交通事故直後に示談してはいけない
  2. 事故直後に当事者間で示談の話が出たら、代理店や保険会社や弁護士に確認をすることが重要
  3. 一般論として、事故直後は、示談をする時ではない

補足

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交通事故

交通事故直後の対応