債権者の扱いに関する注意点

債権者の特別扱いは許されない

 借金などの債務を負うに至るまでには、いろいろな事情がありえるものです。債務の種類にも、いろいろなものがありえます。ただし、自己破産手続に入るとなれば、特定の債権者を特別扱いすることは許されません

 典型的には、「知人からの借り入れは支払いを続けたい」といったものがあります。

 このような要望のために、特定の債権者を裁判所に届け出ないといった措置を取ると、免責不許可事由に該当することもありえます。特定の債権者に支払った金額については、返還を求める必要が出てくることもあります。そのような業務を行うために、本来であれば同時廃止でよかった事案が、多額の費用が必要な管財事件となってしまうおそれも生じます

 裁判所という公的機関を使用するという状況になった以上は、借金の状況をすべて正直に申告する必要があります。

破産手続で免責が許可されない場合(免責不許可事由)の説明

債権者の申告忘れも望ましくない

 破産手続の際には、債権者一覧表を作成し、裁判所に提出することになります。ただし、意図せず特定の債権者の申告を忘れてしまうことがあります。

 この場合、免責許可決定を得たとしても、申告忘れの債権には、免責の効果が及ばない(債務の支払責任が残ってしまう)おそれがあります。破産しても、このような紛争の種を残してしまっては、手間をとった実益が薄れてしまいます。

 せっかく裁判所を利用して、手間のかかる手続を取る以上、万全の申し立てを行うべきです。

破産手続によっても免責されない債務(非免責債権)について

財産に関する注意点

意図せず財産を保有していることがある

 破産手続を検討する以上、手持ちの資産は多くないことが通常といえます。ただし、自分でも気が付かないうちに、一定額の財産を保有してしまっているケースがあります。

 典型的なケースは、以下のとおりです。この金額によっては、同時廃止相当の事案が、管財事件に振り分けられてしまうこともあるため、注意が必要です。

  • 生命保険の解約返戻金が積みあがっていた
  • 子どもの学資保険(これも生命保険です)の解約返戻金が積みあがっていた
  • 退職金の金額が相応の金額になっていた
  • 先祖伝来の土地の持ち分を相続していた
  • 比較的価値のある車両を保有していた

財産をしっかりと把握することが重要

生命保険(学資保険を含む)の調査

 生命保険(学資保険を含む)の残高が積みあがっているかどうかは、保険会社の担当者に試算してもらえばすぐにわかります。担当者に連絡して、書面で送付してもらいましょう。

退職金の調査

 勤務先に聞いて、退職金の見込み額を確認する必要があります。破産手続の資料になりますので、書面化してもらうべきといえます。

土地の調査

 親族に確認して、先祖伝来の土地(農地のことが多いといえます)について、遺産分割をしたかどうか確認するべきです。

 よくわからないという場合には、自治体で「名寄帳」を発行してもらい、先祖の名義の土地がないかどうかを調査すべきです。意図せずとも不動産を保有しているとなると、管財事件に振り分けられる可能性がありますので、重要な調査となります。

車両の調査

 新車登録から軽自動車で4年、普通自動車で6年が経過していれば、無価値の財産として把握されることが通常です。車検証を確認しましょう。

 とはいえ、クラシックカーで古くとも市場価値があるという場合には、処分が必要になることもあります。

金融機関が債権者の場合等の注意点

預貯金がある金融機関から借入れがある場合が特に危険

 金融機関のカードローンを利用しているという場合は、特に注意が必要です。借り入れのある金融機関に預貯金がある場合、相殺を受けるおそれがあります。預貯金があっても、借入金と相殺されてしまうと、残高がなくなってしまいます。

 給料の振込直後などに相殺を受けるとなると、生活費が不足するリスクが高く、非常に危険な状態となります。

自動車ローンを支払い中の場合も危険

 自動車ローンを支払い中の場合、車検証の名義がローン会社となっていることが、多くあります。

 この場合、弁護士介入時点でローンの残額がある場合、ローン会社が自動車を引き上げることが通常です。この対策で、すぐに代わりの自動車が用意できればよいところです。しかし、その原資もないとなると、日々の移動手段を失うという、非常に危険な状態となります。

弁護士介入のタイミングが重要

 通常、弁護士が債務整理に関する介入通知を送付すると、金融機関は預貯金と借入金を相殺します。自動車ローンの場合は、弁護士介入時点で自動車の引き上げの依頼がなされ、具体的な手続へと進みます。弁護士の介入通知により債権者からの取り立ては止まる一方、このような手持ち財産を失うリスクが生まれます

 このため、金融機関に対して弁護士介入が予定される場合には、預貯金の有無を確認しておき、事前に全額引き出すなどの対策を取るべきです。自動車ローンを支払っていて自動車の引き上げが予測される場合には、代わりの自動車を用意するなどの対策が必要になります。

結局、弁護士への相談が無難

破産を決意した場合には、弁護士に相談するべき

 破産手続は、裁判所という公的機関を利用した債務整理方法です。このため、いろいろな法的な制約が存在します。

 これを確認せずに同じように生活を続けると、思わぬリスクを抱え込むおそれがあります。これが簡単に解消できるリスクであれば、それほど問題にはならないでしょう。

 他方、個人の同時廃止が相当な事件が管財事件に振り分けられてしまうと、20~30万円の裁判所への予納金が支払えなければ、破産手続を開始できない事態になるケースもあります。最悪の場合は、免責が認められないという事態もありえます。

 このため、破産を決意したという場合には、まずは弁護士に相談するべきといえます。そして、弁護士に依頼して、財産調査、債権調査を万全に行い、手続を準備することが望ましいでしょう。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

債務整理をご希望の方へ

自己破産手続の説明