交通事故の「消極損害」についての説明

積極損害の内訳

 交通事故の消極損害として認められる主な内容は、以下のとおりです。どの損害項目も、支払いを受けるためには、交通事故と損害発生の間に、相当因果関係が認められることが必要です。

  1. 休業損害
  2. 逸失利益

積極損害の各項目の説明

休業損害

 交通事故により怪我をしたなどの事情で、働けずに所得が得られなかった場合に、その金額相当のものを「休業損害」といいます。

 サラリーマンなどの給与所得者の場合は、勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、その内容に基づいて加害者の保険会社に支払いを求めることになります。結局、実際に得られた金額はわからないため、過去の所得の実績から推計して算出することになります(給与職者の場合、過去90日の所得を参照するのが一般的です)。通院のために有給休暇を取得した場合も、相当額を賠償してもらうことができます。ただし、「早退2日で1日欠勤扱い」など、会社のルールがある場合には、休業損害を請求する際には、事務担当者に細かい説明をしてもらう必要が出てくるケースもあります。

 専業主婦(夫)の場合も、平均賃金などから家事労働を金銭的に換算して、休業損害を認めることが一般的です。ただし、休業日数をどのように計算するかで、加害者の保険会社と争いになることもあります。

 他方、自営業者の場合、確定申告書などで推計することになります。とはいえ、厳密さに欠ける申告内容の場合もあり、保険会社との協議で収入認定が難航することもあります。また、兼業主婦で仕事の休みがない方や無職者の場合、さらに交渉が困難になることがあります。

逸失利益

 事故により後遺障害が残った場合には、「労働能力が減少した」と解釈されます。例えば、交通事故で指が失われ、指を使う細かい仕事ができなくなった、という場合です。この将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった、失われた利益のことを「逸失利益」といいます。

 この場合は、過去の労働能力から将来得られたべき所得を推計し、また、後遺障害の程度により、失われてしまった金額を算定します。前年の所得と同額で計算する場合には保険会社と争いにならないことも多いですが、将来の昇給を盛り込んだ推定をするといった場合には、算定に困難が伴うこともあります。ある程度重い後遺障害(例えば12級以上)である場合は、逸失利益が損害の大部分を占めることが通常です。このため、一般論として、この金額算定で妥協するべきではありません。

 一般的には、「基礎収入×後遺障害に対応した労働能力喪失率×該当するライプニッツ係数」という数式にて算定されます。

おわりに

 逸失利益は、はっきりと確定した損害ではありません。過去の収入から将来の収入を推計するという性質のもので、「フィクション」と表現されることも、しばしばあります。よって、裁判所でも評価が分かれることがあり、完全に決まった答えはありません。特に物件損害と比較すると、変動の幅はそれなりに大きい、というべきです。

 消極損害は評価額が分かれることも多いため、悩みや疑問がある方は、弁護士に相談することを検討するべきです。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

交通事故の損害賠償の考え方