なぜ未成年者の飲酒は禁止されるのか・その法的根拠

はじめに

法律による飲酒の禁止

 未成年者とのわいせつな行為をしたとの事情で、芸能人が話題になることがありました。このような事案でしばしば問題となるのが、その行為に先立つ飲酒です。

 おなじみと思われますが、未成年者の飲酒につき、法律は禁止しています。アルコールのCMで「法律で未成年者の飲酒は禁止されています」といった注意書きが出されているとおりです。

 それでは、この「法律」とは何でしょうか。「未成年は飲酒禁止」というのは当たり前すぎて、具体的な法律を知らない方も多いのではないでしょうか。結論としては、「未成年者飲酒法」という法律により、未成年の飲酒は禁止されています。

未成年者飲酒法の概略

 未成年者飲酒法は、4条から構成される、非常に分量の少ない法律です。未成年者の飲酒を禁止することを目的として制定された特別法です。

 この法律の制定は大正11年と古く、何回かの改正を経て、現在も有効なものです。

未成年飲酒禁止法

未成年飲酒禁止法の内容

条文ごとの解説・第1条

条文の本文

 以下は、第1条の抜粋となります。なお、カタカナの体裁をひらがなにするなどして、読みやすさを優先しています(以下同じ)。

1項 満20年に至らざる者は酒類を飲用することを得ず

2項 未成年者に対して親権を行う者もしくは親権者に代わりてこれを監督する者未成年者の飲酒を知りたるときはこれを制止すべし

3項 営業者にしてその業態上酒類を販売または供与する者は満20年に至らざる者の飲用に供することを知りて酒類を販売または供与することを得ず

4項 営業者にしてその業態上酒類を販売または供与する者は満20年に至らざる者の飲酒の防止に資するため年齢の確認その他の必要なる措置を講ずるものとす

条文の解説

 まずは未成年者の飲酒を禁止しています(1項)。そして、未成年者が飲酒することがないように、親権者の監督を求めています(2項)。さらに、酒類の販売を行う業者が未成年者に酒類を提供しないようにすることを求める規定が続いています(3項及び4項)。

第2条

条文の本文

満20年に至らざる者がその飲用に供する目的をもって所有または所持する酒類及びその器具は行政の処分をもってこれを没収しまたは廃棄その他の必要なる処置を為さしむることを得る

条文の解説

 未成年者が保有している酒類や飲酒のために用いられる器具について、行政処分によりこれを没収することができるという行政の権限を規定しています。

第3条

条文の本文

1項 第1条第3項の規定に違反したる者は50万円以下の罰金に処す

2項 第1条第2項の規定に違反したる者は科料に処す

条文の解説

 未成年者に酒類を提供した販売業者に50万円以下の罰金刑が規定されています。また、未成年者の飲酒を止めなかった親権者につき、科料が規定されています。

 重要な点は、飲酒をした未成年者自身には罰則の適用はない、ということです。判断能力の低い未成年者の行為は処罰の対象とせず、それを止めなかった周囲の大人に責任を求めるという基本的な法律のスタンスが確認されます。

第4条

条文の本文

法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人または人の業務に関し前条第1項の違反行為をなしたるときは行為者を罰するのほかその法人または人に対し同項の刑を科す

条文の解説

 お店などを念頭に、法人が未成年者に酒類を提供した場合に、その提供した本人のみならず、法人自身も処罰するという規定です。「両罰規定」といわれる扱いです。

改正状況

 未成年飲酒法は、販売業者に対する罰則が軽いなどといった批判がありました。このため、平成13年ころまでに数回の改正がなされ、販売業者の罰則強化(3条1項、科料→罰金50万円)や、販売業者による年齢確認措置を求める規定(1条4項)が追加されています。

未成年飲酒禁止法の改正について

おわりに

 未成年飲酒禁止法は、単純な法律です。他方で、我々の生活に深くかかわるものです。

 また、飲酒した未成年者本人を処罰する規定がないなど、未成年者の要保護性に配慮した法律となっています。このような規定ぶりは、昨今吹き荒れる自己責任論からすると、未成年者の保護に傾斜しすぎているように理解されてしまうかもしれません。

 とはいえ、判断能力が未熟とされる未成年者に対する法律の原則というのは、このような内容になっていることが通常です