はじめに

 交通事故で、過失割合が問題になることがあります。加害者から、被害車両につき、「動いていた以上、多少の過失はあるはずだ」という主張を受けることもあります。

 実際に、追突事案や、停車中の衝突事案でない場合は、被害者側に多少でも過失を認定されてしまうことが多くあります。特に、示談ベースであると、加害者の保険会社としても過失ゼロでの和解を受け入れられない、ということが多く、交渉が難航することがあります。

 このような争点について、進路変更車両(加害車両)と、直進車両(被害車両)の衝突事案について、後続車両の過失を否認した事件が、自動車保険ジャーナル1985号95ページより掲載されています。この内容について、簡単に紹介します。なお、判決文中、「原告」などの表記を、便宜上「被害者」などの表現に置き換えています。

事案の概要

事故日 H24.5.23
事故態様 進路変更車両と直進車両との衝突
通院期間 約11月(入院13日)
症状 TFCC損傷、左膝打撲傷、左肋骨骨折等
後遺障害等級 該当なし
争点 被害者の過失の有無
裁判所の判断 被害者には過失はない
考慮要素 加害者が進路変更してから衝突までに1.15秒
特記事項 被害者は自動二輪車

判決要旨抜粋

過失割合について

 加害車両は右にハンドルを切る約2.0メートル手前の地点で右側の方向指示器による合図をしているが、同車の速度は時速約10~20キロメートルであったから、被害車両の合図から右にハンドルを切るまでの時間は約0.36~0.72秒にすぎなかったと認められる。そして、加害車両は右にハンドルを切ってから約3.2メートル進行して被害車両と衝突しているが、加害車両の速度は時速約10キロメートルであったから、同車が右にハンドルを切ってから衝突するまでの時間は約1.15秒と認められる。

 このように、加害車両の方向指示器による合図から進路変更開始まで1秒もなく、合図から衝突までの時間も2秒に満たないことを考慮すると、南行車線を時速約40キロメートルで走行していた被害者は、直ちに加害車両の合図を認識しても本件事故を回避することは困難であったというべきであり、被害者の過失は認められない。

TFCC損傷について

 省略

判決についてのコメント

過失割合について

 動いている車同士の衝突事故であっても、「回避可能性」がなければ、過失責任(過失割合)は問えないことは当然です。とはいえ、動いていたという事実はすぐに明らかになる一方で、「回避可能性」が「ない」ことの証明は難しいものですこの一般論は、過失がほとんどないと思われる被害者にとって酷な結果となることがあります

 この判例では、ドライブレコーダーなどの記録がなかったと解される中、警察での実況見分記録などから具体的な所要時間を割り出し、回避可能性がないという判断につなげています。警察の記録など、ある程度固い証拠から、「1秒に満たない時間的猶予しかない」という判断ができたことから、被害者に有利な判断となったと解されます。

TFCC損傷について

 医師の診断書などにより、事故と傷害の因果関係を認定しています。高度な専門的判断となると、やはり医師の診断書や診療録が極めて重要となるといえます。

本判決の意義

 データなどから事故状況を再現したときに、どう考えても回避可能性がないと思われる場合には、安易にあきらめるべきではないと言えます。裁判所も、「どう考えても回避は無理だ」との心証を持ってくれれば、動いていた車両同士の事故でも無過失との判断をすることはありえます。

 とはいえ、解決までに時間や手間がかかることは、やむを得ないところです。

 なお、過失割合の認定のため、ドライブレコーダーを車両に積んでおいてもらいたいものです。客観的なデータがなければ、なかなか戦うことも難しいことが多いのが実情であるためです

認定内容一覧表

  請求額(円) 認定額(円)
治療関係費 1,139,869 1,103,449
通院交通費 43,750 41,870
休業損害 5,482,033 426,757
入通院慰謝料 1,500,000 1,400,000
物的損害 795,131 180,950
小計 8,960,783 3,153,026
既払金 ▲1,066,118 ▲1,066,118
弁護士費用 800,000 200,000
合計 8,694,665 2,286,908

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

平成27年ころ以降の交通事故判例

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