飲酒運転で在宅起訴された刑事事件の事例についてご紹介します。
解決までの流れ
概略
Dさんは、約10か月に飲酒運転の上、交通事故を起こしてしまいました。
事故の通報により飲酒が判明し、呼気検査で酒気帯び運転のアルコール基準量を超えていることが判明しました。Dさんは逮捕されることはなく、警察官から「また取調べで呼び出すから」と告げられます。
起訴まで
事故日翌日以降、Dさんにはたまに警察から連絡があり、平日に取り調べのために警察署に行っていました。一度、検察庁にも呼び出され、検察官による取調べも行われました。取調べで特に争うことはありませんでした。
なお、Dさんの運転免許は取り消され、2年間は免許再取得も不可能な状態となりました。また、Dさんは28歳で実家暮らしでしたが、事故の影響もあり、失業してしまいました。
ちなみに、事故の被害者は全治2週間の怪我を負っていましたが、示談は現在まで成立していません。
そして、事故から約10か月後の現在になり、裁判所から「起訴状」と「弁護人選任に関する通知及び照会」という書面が届きました。
弁護士の選任、裁判期日まで
国選弁護人の選任
Dさんは、それほど手持ち資産がなかったため、国選弁護人を依頼することに決め、すぐに書面を返送しました。
3日後、国選弁護人に選任されたという弁護士より電話連絡がありました。今後の方針を決定するため、1週間後に弁護士事務所で面談を行うことにしました。
また、裁判期日の決定書が裁判所より届きました。裁判期日は1か月後に指定されていました。
弁護人との面談
1週間後、Dさんと弁護士は面会を行いました。事件の経緯を検討し、以下の内容を弁護士と確認しました。
- 裁判期日までに被害者との示談を成立させる。
- 裁判期日までに車が必要ではない仕事を見つける。
- 父親に情状証人として裁判期日に来てもらう。
- 事故のことをもう一度思い出し、事故原因への反省を深める。
- 当然のことであるが、何があっても車の運転はしない。
これらの内容のうち、1は弁護士が担当することにし、2~5はDさんにお願いすることにしました。
示談の成立
弁護士は、事故の被害者が契約している保険会社などに事実確認を行いました。
示談に関しては、双方の主張する金額に若干の隔たりがあったようでした。ただし、被害者の怪我は既に完治していた上に、Dさんが被害者に対して誠実に対応していたため、裁判前になんとか示談成立となりました。
情状立証のための準備
Dさんは、起訴されたことを契機に、もう一度事故の事実と向き合うことにしました。
反省を深めるため、なぜ事故を起こしたのか、今後どうすれば事故を避けられるのかといった点について、書き出すことにしました。
また、就職活動も平行して行っていましたが、父親の紹介で、実家近くに仕事を見つけることができました。
裁判期日
裁判期日では、弁護士とDさんとDさんの父親が、裁判所に出頭しました。
弁護士は、本人の反省と、今後は車を使用しないでも仕事ができ、社会生活を送っていける事実に重点を置き、弁護活動を行いました。裁判官と検察官は、将来的な事故の可能性を恐れていたようでした。とはいえ、Dさんのしっかりした受け答えもあり、その不安は払拭されたようでした。
審理手続は1回の期日で全て終了し、次回に判決を残すのみとなりました。判決日は、裁判期日から2週間後と定められました。
判決
判決期日には、弁護士とDさんが裁判所に出頭しました。
判決は、懲役1年、執行猶予3年と決まりました。判決では、被害者との示談が成立していること、Dさんが飲酒運転を深く反省していること、Dさん車を運転する必要のない仕事を見つけたことを評価し、執行猶予付き判決としたことが説明されていました。
判決の読み上げは5分ほどで終了しましたが、裁判官が最後に、「執行猶予期間中に再度懲役刑となると、その犯罪の刑に今回の懲役刑も加算され、非常に長期間刑務所に行かなければならなくなるが、そうならないように気をつけてください。」 と強く念押ししました。
判決に対してDさんは控訴しなかったため、そのまま判決確定となりました。
費用の目安
国選弁護人の場合
被告人には負担なし
私選弁護人とした場合
着手金及び報酬金で合計約50万円