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刑事事件とは
刑事事件とは、窃盗、傷害など、犯罪事件が発生した場合に、この犯人を明らかにし、刑事裁判により科すべき刑罰を決定する手続を指します。
刑事事件では、被疑者・被告人となる方が捜査機関に身柄を拘束されるなど、重大な環境の変化が生じます。弁護士は、身柄の解放を目指したり、裁判の場で被告人の言い分を代弁するなどの役割を担います。
刑事手続の流れ
身柄拘束がある場合
起訴等の処分の決定まで
罪を疑われている者につき、逮捕手続により、被疑者は最大72時間の身柄拘束がなされます。
引き続きの勾留手続により、10日間を限度に身柄拘束がなされます。勾留手続は1回延長が可能なため、最大で20日間の身柄拘束がなされます(なお、特に重大犯罪の場合、さらに5日の延長がなされる場合もありますが、実務上はそのようなケースはほぼありません)。
一つの事件につき、原則として最大で23日間の身柄拘束の間に、警察官や検察官が取調べを行い、最終的に検察官が事件処理を決定します。検察官が「起訴」を選択した場合、裁判が行われることとなります。この場合には、原則として身柄拘束が継続します。
裁判まで
起訴後、最大2か月間の勾留が継続します。ただし、勾留は1か月単位で延長されます。勾留の延長は1回に限ることが法律上の原則ですが、実務上、例外規定により裁判の終了まで身柄拘束がなされることが一般的です。
ただし、起訴後には、保釈が裁判所に認められれば、保釈金の支払いの上、身柄の解放がなされます。保釈が認められるか否かは、犯罪の内容や性質に加え、被告人の受け入れ体制の有無などが総合考慮されることになります。また、保釈金の分割払いは認められていないため、一時的であっても大きな金額の現金を用意する必要があります。
裁判後
実刑判決の場合には、そのまま刑務所に収監されることになります。
執行猶予判決の場合や、罰金刑などの判決の場合には、判決後に身柄は解放されます。
身柄拘束がない場合
起訴等の決定まで
逮捕されていない、逮捕されても勾留はされないなど、身柄拘束を解かれ、在宅で事件処理が行われるケースがあります。社会生活を送ることは自由ですが、ときおり警察や検察の呼び出しがあり(平日が通常です)、任意に取り調べ手続がなされる扱いになります。
起訴などの処分決定までに、特に時間的な制限はありません。時間制限がない分、身柄拘束のある事件よりも処理に時間がかかることが多いといえます。事件によっては、犯行日から1年以上かかってから起訴状が届く、といったこともあります。
裁判まで
在宅で裁判を待つ事となります。国選弁護人を希望される場合は、起訴後に選任手続が行われますので、この間に打ち合わせを行うことが通常です。
他方、余罪がある場合などには逮捕され、身柄拘束がなされる場合もあります。
判決後
身柄拘束がある場合と同様です。 実刑判決の場合には、判決後、そのまま刑務所に収監されることになります。
執行猶予付判決の場合や、罰金刑などの判決の場合には、判決後も身柄拘束がなされることはありません。
弁護士の関与
裁判外の関与例
留置施設などでの接見
身柄拘束がなされる場合、事件によっては「接見禁止処分」がなされる場合があります。この場合、親族などの方でも被疑者に会うことができません。しかし、弁護人だけは例外ですので、接見禁止中であっても被疑者とコミュニケーションを行うことができます。
示談交渉
傷害罪や窃盗罪など、被害者の方との交渉が必要な事件の場合、被疑者・被告人に代わって示談交渉を行います。
不起訴処分の獲得を目指す
起訴して裁判を行うまででもない事案の場合には、そもそも検察官が起訴しないという判断を行う場合があります(不起訴処分)。このような処分が考えられる事案の場合には、検察官と話し合いの上、こちらの主張を伝えて起訴を留まるよう働きかけを行います。
保釈手続
起訴後に被告人が保釈を希望する場合には、身元引受人や保釈金の確保など、被告人に代わって各種手続を行います。
違法捜査の監視
警察や検察により違法捜査がなされていないか、チェックを行います。
裁判での関与例
裁判での適切な刑事弁護活動
被告人の主張を代弁し、裁判官に伝えます。
情状立証活動
被告人の監督を担当してくれる方(親族や配偶者など)に協力をもらい、陳述書を作成してもらう、情状証人として尋問を行うなどの手続を検討します。
よくある質問
保釈金は返ってくるのか
保釈の条件をしっかりと守り、裁判にも出頭すれば、裁判手続がすべて終了した後に、最終的に保釈金は返ってきます。返ってくることのない「罰金」等とは異なります。
裏を返せば、正当性の認められない理由で裁判を休んだような場合(①期日を忘れていて寝過ごした、②就職の面接日だった、などといった理由では、当然認められません)や、保釈中にさらに犯罪を犯したような場合には、保釈金は一切戻ってきません。保釈金は安い場合でも100万円を超えることが通常ですので、このような事態は絶対に避けるよう、保釈中は特に慎重に行動すべきです。
執行猶予とは何か
犯罪を犯し、その罪に対する刑を科せられた場合であっても、「執行猶予」を付された場合には、刑務所には行かずに社会に出て生活を送ることが認められます。そして、執行猶予期間に他に刑事事件を起こさなかった場合には、その刑の言い渡しは効力を失います。
「懲役1年6か月、執行猶予3年」との判決が出た場合には、3年間社会で犯罪を犯さずに生活を送った場合には、刑務所に行く必要はなくなります。「3年後に刑務所に行かなければならない」という意味ではありませんので、ご注意ください。
国選弁護人と私選弁護人に違いはあるのか
色々な考え方があると思います。多くの弁護士は、「大きな違いはない」と答えると思われます。国選弁護人も国から依頼を受け、費用を貰って仕事をしている以上、最善を尽くすことは当然です。
ただし、刑事弁護を専門に行っているような弁護士事務所であれば、そのノウハウの蓄積により、適切な対応を受けられる可能性は高まるといえます。