住宅資金特別条項付個人再生手続の所要時間などについて

住宅資金特別条項付個人再生手続に望まれる所要時間について

はじめに

 自宅不動産を守りながら他の債務を圧縮する住宅資金特別条項付個人再生につき、手続にかけるべき望ましい時間の説明をします。

 実際には、この記事に記載した所要時間よりも短縮して手続を進めることも、可能です。ただし、急ごしらえの申請になってしまうと、どうしてもどこかで無理が生じることが多いものです。このため、この記事に記載したとおり、約10か月といった期間をかけながら、じっくりと進めていくことがよいと考えます。

 なお、手続全体の概要については、以下の記事をご参照ください。

住宅を守りながら債務整理をする、住宅資金特別条項付個人再生手続の説明

相談から手続の申立まで(約4か月)

初回面談時

 個人再生手続をご希望の方の場合、法律相談に来てもらった際に、当事務所では手続申請のための書式をお渡ししています。この書式は甲府地方裁判所の仕様のもので、それなりに分量があります(東京地裁とは異なるようです)。

 この書式のうち、特に作成に時間がかかるものは、家計表になります。家計表は3か月分必要であるところ、相談前から家計表を作成しているという方は、まずいません。このため、まずは習慣づけの意味もあり、相談から3か月きっちりと時間をかけて、家計表を作成してもらいます。

 弁護士は債権者に介入をして、債権調査に入ります。業者によっては債権の開示までに2か月以上の時間を要するところもあります。このため、正確な申立を目指すという場合には、相談から申立までにある程度の時間がかかるものです。

2回目の面談時

 3か月が経過するかどうかというところで、2回目の面談の機会を設けることになります。この時までに、分かる範囲で書式を埋めてもらうことになります。また、この時に、給与明細書などの提出書面についてもお持ちいただくことになります。

 手続が順調に進むようであれば、このころまでに不動産鑑定士の先生による鑑定手続を行うことにします。この費用が必要になりますので、約3か月で分納してもらうか、当初の預り金とするか、家計状況により決めていくことになります。

裁判所への申請の準備

 資料がそろっていれば、2回目の面談から遠くない時期に、裁判所に提出する資料一式を作成することが可能です。ただし、どうしても事案によって必要書面の不足が生じがちであるため、この準備にある程度の時間がかかることが多いものです。

 順調に進めば、相談の時から4か月後ころに、裁判所への申請を行うことが可能です。なお、この時までには、原則として住宅ローンの未払いは解消することをお願いしています。

申立てをしてから再生計画の認可決定まで(約5か月)

再生手続開始決定まで

 裁判所へ手続の申請をすると、担当部署で一定のチェックを受けます。このチェックの後、「審尋期日」が設定されます。この時には、申立人と弁護士が連れ立って、裁判所に行くことになります。

 審尋では、担当裁判官から事情の確認を受けることになります。そして、特に問題がなければ、再生手続開始決定が出されます。

 この開始決定により、その後の差押えが禁止されるなどの重要な法的効果が発生します。手続の中では、最も重要な局面の一つといえます。

履行テストの実施

 裁判所では、4回を原則として、履行テストが求められます。これは、再生計画が認可された場合に支払いが必要となる金額につき、毎月1回のペースで、4回の支払テストを行うものです。

 この履行テストがクリアできなければ、再生計画の認可は極めて困難になります。このため、何としても支払いを継続してもらう必要があります。なお、当事務所では、弁護士の預り金口座に履行テストの支払いをしてもらうことが通常です。

再生計画の認可

 4回の履行テストがクリアできれば、再生計画が認可されることが通常です。この場合は、概ね計画が認可された翌月ころから、実際の支払いを行ってもらうことになります(厳密には、再生計画の確定した日の属する日の翌月末を初回支払期日とする計画を組むことが多いものです)。

手続のズレの調整(約1か月)

 手続を進めていくと、細かいところでストップがかかることが多いものです。鑑定費用の積み立てや、自動車の扱い、住宅ローンの未払い分の清算などが、障害となりやすいものです。他にも、給与明細書が必要なものと1か月ズレていたといった場合に、細かい遅れが生じることになります。

 このズレを調整するために、1か月程度の時間がかかることがあります。

小括

 結局、住宅資金特別条項付個人再生を申し立てる場合には、スムーズに進んだ場合でも、だいたい面談から10か月程度の時間がかかります

時間を短縮する方法

 手続に要する時間を短縮するためには、以下のような方法があります。

  1. 弁護士の相談前の家計表を、なんとか用意してもらう
  2. 履行テストを前倒しして行う

 しかし、手続を申請するためには、鑑定費用や申立費用で、ある程度の実費が必要になります。住宅ローンの支払いと併せて、手続費用の支払いを短期間で行っていくとなると、一時的な負担がかなり重くなります。さらに、弁護士費用もお願いすることになります。

 親族からの援助があるなどで、手続を早める場合の負担に耐えられるという場合であれば、時間を短縮するということも可能でしょう。ただし、基本的には、時間をかけながら準備することで、無理のない手続申請とすることが期待できます。無理のない準備が、その後の支払いにも繋がるといえます。

 このため、当事務所としては、約10か月程度の時間をかけることが望ましいものと考えます。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

債務整理

住宅資金特別条項付個人再生の説明