はじめに

 交通事故で多い症状は、頸部や腰部の神経症状です。この症状につき、後遺障害に認定される場合、14級9号に該当することがあります。実際に症状が重いという場合には、より上位等級である12級13号に該当することもあるものの、件数としては、必ずしも多くないものです。

 後遺障害の認定申請は、認定機関に診断書などの資料を提出することで行い、判断を待つことになります。この一度出た判断結果については、裁判で争われた場合でも、覆ることはそれほど多くないと考えるところです。

 しかし、今回紹介する裁判例は、事前に14級9号の後遺障害等級認定を受けていた事案で、12級13号への該当を前提に請求を行っていた事案につき、その後遺障害の残存自体を否定したものです(自動車保険ジャーナル1949号・51頁より掲載)。この内容について、簡単に紹介します。後遺障害診断書の記載が、医師の所見と必ずしも合致していないことや、損傷車両の修理額が必ずしも高くないことが重視されたように解されます。

 なお、判決文中、「控訴人」との表記を、便宜上「被害者」としています。

事案の概要

事故日 H22.9.17
事故態様 普通車同士の追突
主張する通院期間 通院約10月半
主張する症状 後頚部及び肩甲帯周囲の疼痛
自賠責の認定 14級9号
裁判所の判断 後遺障害に該当しない
特記事項1 車両修理額約12万円
特記事項2 請求側の主張に沿う診断書などの記載は、病院の医療事務担当者による作成
特記事項3 休業損害の評価にも争いあり

判決要旨抜粋

後遺障害の認定について

 「被害者は、腰痛については、受診当初に腰背部痛を訴えていたものの、その後腰痛の訴えはなく、平成23年1月頃から背部痛は軽減しているにもかかわらず、本件後遺障害診断書には、同年8月6日時点でも、胸腰椎部の著しい疼痛のため可動域制限があると記載されている。また、脳神経外科の戊田医師が同日時点で、ノイロトロピンを休止してみるとの判断をしていることからすれば、その時点での被害者の頸部から肩甲部にかけての疼痛についても、疼痛治療剤が必要でない程度に消失していたと認められるところ、本件後遺障害診断書には頸椎部及び肩関節の著しい疼痛により可動域制限があるなどと記載されている。さらに、本件後遺障害診断書の自覚症状の記載内容を前提としても、左側回旋時や下を向いたときの後頚部痛や後頚部から肩甲部にかけての疼痛であって、常時疼痛があるわけではない」

と認定したうえで、

 「本件後遺障害診断書の記載内容を採用することはできず、被害者に後遺障害が残存していると認めるには足りない」

とした。

休業損害の評価について

 <詳細略>就業実態がないことから、被害者の休業損害の発生を否定した。

判決についてのコメント

後遺障害認定について

 物件損害の修理費用が安い事案だと、事故による衝撃が小さかったものと理解されがちです。そのような状況に加えて、診療録にて明らかになっている被害者の症状と、後遺障害診断書の記載が乖離していていたようです。

 このような事情より、認定機関の評価では14級9号に該当していた症状につき、後遺障害自体が否定される結果となっています。医師などで構成される認定機関の結果が覆ることは頻繁に起こることではないと解されるところ、被害者にとっては厳しい結論となっています。

休業損害について

 実際の勤務実態などがない状況だと、休業損害や逸失利益の請求は難しいことが多いところです。本件も、そのような枠組みの中の判断だったように解されます。

本判決の意義

 客観的な資料から推測される事故の規模が小さい場合には、訴訟による請求を行う場合でも、注意が必要と解されます。後遺障害の認定自体が否定されてしまうとなると、賠償額はかなり小さくなってしまうためです。

認定内容一覧表

  請求額(円) 認定額(円)
休業損害 3,647,123 0
通院慰謝料 1,500,000 1,150,000
後遺障害慰謝料 2,900,000 0
後遺障害逸失利益 7,074,495 0
弁護士費用 1,512,161 100,000
合計 8,245,329 1,250,000

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

平成27年ころ以降の交通事故判例

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