はじめに

 交通事故で、因果関係が問題になることがあります。実際に症状があるにも関わらず、この発症の時期が、交通事故から一定期間が経過した後であったというのが典型です。いろいろな神経症状などが発症した場合に、事故から発覚していたり、医学的に説明がつく所見でないと、「交通事故が要因とは解されない」という判断となってしまうおそれがあります。

 このような争点につき判断された裁判例が、自動車保険ジャーナル1949号129頁より掲載されています。この内容について、簡単に紹介します。本件では、事故後4か月後に発症した症状について、相当因果関係を否定した判断となっています。

 なお、判決文中、「原告」との表記を、便宜上「被害者」としています。

事案の概要

事故日 H22.8.12
事故態様 普通車同士の追突
主張する通院期間 入院3日・通院59日
主張する症状 腰椎椎間板ヘルニア、脊髄損傷等
後遺障害等級 非該当
特記事項1 事故前H21.10時点でヘルニアあり
特記事項2 事故から4か月後に歩行障害等を発症

判決要旨抜粋

椎間板ヘルニアの発症について

 被害者は本件事故の結果、頸部・背部・腰部挫傷の傷害を負ったこと、本件事故直後から右下肢のしびれもあったことが認められる。しかし、骨折等の外傷は認められない上、L4/5、L5/S1の椎間板ヘルニアは同一か所に同程度の状態で本件事故以前からその存在が確認されており、平成21年10月時点で腰痛やしびれの症状が出現していたから、既往症といえる。したがって、被害者が、本件事故によって椎問板ヘルニアを発症し、その治療の必要性が生じたと認めることはできない。

右下肢の麻痺などの症状について

 右下肢の麻痺に関する訴えは、本件事故から約4ヶ月を経過した平成22年12月に歩行障害や右下肢の筋力低下が認められ、約5ヶ月経過した平成23年1月に歩行障害及び右足関節以下完全麻痺が生じ、約15ヶ月経過した平成23年11月に左下肢に筋力低下、右下肢の感覚が消失したというのであり、本件事故から発症までに相当の時間が経緯している上、次第に症状が悪化して拡大している。通常、外傷による症状は、受傷後が最も強く、次第に軽快するか不変であるという経過をたどるところ、被害者の上記症状の経過はこれと異なるものであり、本件事故による外傷から生じた症状とは考えがたい。

判決についてのコメント

椎間板ヘルニアについて

 事故以前にヘルニアが認められると、既往症との判断を受けることは避けがたいところです。通常の追突事案では、事故によりヘルニアが発症するほどの大きな衝撃となることは、必ずしも多くありません。このような状況で、客観的な証拠(事故前後でヘルニアの状況に大差ない)が出てきてしまうと、被害者に不利な認定となる事態も、どうしても避けにくくなってしまうものと解されます。

右下肢の麻痺などの症状について

 脊髄関係の症状と事故の相当因果関係の立証は、一般論として容易ではないと解されます。そのような状況で、事故から4か月もの期間が経過した後に大きな症状が出てきたと主張しても、事故との相当因果関係の立証をするのは、なかなか困難なものと解されます。

 実際に、事故から少しずつ症状が出てきて、ある時これが激しいものとなることは、ありうるものでしょう。とはいえ、判決で述べられる「通常、外傷による症状は、受傷後が最も強く、次第に軽快するか不変であるという経過をたどる」という一般論を超えることは、容易ではないところと解されます。

本判決の意義

 一般的な言及として、事故から4か月経過した後の発症となると、因果関係の立証は容易ではないものと解されます。仮に事故直後から症状がある場合には、医師にその旨を伝えて、カルテなどに明記してもらうことが重要です。

 医学的に事例の少ない症状となると、それでも立証は難しいかもしれません。

認定内容一覧表

  請求額(円) 認定額(円)
治療費 1,829,970 629,970
文書代 6,150 6,150
入院雑費 4,500 0
入通院付添費 195,000 0
通院交通費 177,000 14,530
休業損害 6,870,348 384,568
逸失利益 78,915,212 0
将来の介護費 12,313,640 0
入通院慰謝料 1,000,000 1,050,000
後遺障害慰謝料 30,000,000 0
弁護士費用 10,000,000 0
既払金 ▲3,734,418 ▲3,734,418
合計 40,000,000(一部請求) 0

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

交通事故

平成27年ころ以降の交通事故判例

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