相続税の節税目的の養子縁組でも、直ちに無効ではないとした判決(最判三小H29.1.31)

はじめに

節税養子とは

 養子は、相続手続では、実子と同様に扱われます。このため、養子縁組により、相続人になることが可能です。また、相続人が増えることで、相続税の控除枠が増えます。

 このため、主に資産家のケースで、相続対策のために、養子を取ることがあります。この場合、婿養子などの方式で子どもの配偶者を養子にしたり、孫を養子にするケースが通常です。この節税目的の養子のことを、「節税養子」といいます。

民法第727条(縁組による親族関係の発生)
 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

問題の所在

 養子により相続人が増えると、もともとの相続人の取り分が減ります。このため、孫や配偶者を養子にした場合、兄弟間で利害関係の対立が起こります。このため、養子縁組があった場合に、「養子縁組の意思がない」などとして、この無効が主張されることがあります。

民法第802条(縁組の無効)
 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
1 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

今回紹介する裁判例

 判例タイムズ1435号95ページより、節税養子の有効性について初めて最高裁が判断した裁判例が収録されています。判決では、節税養子の意思と養子縁組の意思は併存するものであり、節税養子であることだけで縁組が無効となるとはいえないと判断しています。結論としては、養子縁組が有効であるとしています

 実務上、非常に重要な判例とえいます。判決文のpdfファイルは、リンク先から見ることができます(別ウィンドウが開きます)。

最高裁第三小法廷平成29年1月31日判決(平成28年(受)1255号)

事案の概要

当事者など 法定相続人から、養子(孫)に対する養子縁組の無効確認をした
争点 養子縁組の有効性
原審の内容 養子縁組は無効
最高裁の判断 養子縁組は有効
特記事項 税理士のすすめで、相続税対策で養子縁組した
特記事項2 節税養子に関する初めての最高裁の判断

判決の要旨

節税意思と縁組意思の関係

 養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。

裁判所の考え方

 専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

本件へのあてはめ

 本件養子縁組について,縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく,「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

判決に対するコメント

 要するに、節税養子でも、その一事では養子縁組は無効になりませんよ、ということです。それに加えて、判決を素直に読むと、養子縁組に関する「縁組意思があること」の立証責任は、養子側にはありません。養子縁組の無効を争う側が、「縁組意思がないこと」を立証しなければならない、ということになります

 本判決は、節税養子をすべて容認した事案ではありません。とはいえ、節税養子を争う側からすると、「縁組意思がないこと」というハードな立証が課されたことになります(一般論として、「ないこと」の証明は難しいもので、「悪魔の証明」などとも言われます)。

 このため、基本的な理解としては、「節税養子は、法的には許容されるものである」という意味を有しているように解されるところです。これまでの相続税対策の実務を是認する判断ともいえ、実務に与える影響は大きいと解されます。

補足

 以下のページも、よろしければご覧ください。

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